組曲虐殺 公演情報 こまつ座「組曲虐殺」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    とても楽しくて、とても悲しい
    小林多喜二が主人公の物語。
    『組曲虐殺』という恐ろしいタイトル。


    あて書きで書かれたという初演と同じメンバーで行われる、奇跡のような再演に出会えて感動。

    ネタバレBOX

    音楽劇ということだけではなく、人と人とが組み合わさり、小林多喜二という人の曲を奏で、組曲となっていく。
    そこでは、多喜二を監視し、捉え、尋問した特高の2人さえも大切な1つの曲である。

    だから彼らへの視線も優しい。

    小林多喜二の生き方は純粋で真っ直ぐだ。
    「代用パンを買うお金をくすねている者がいる」ということだけ。
    「絶望するにはいい人が多すぎる」なんて台詞が似合う。
    監視する特高の2人も、次第に多喜二に感化されていくほど。

    「あとに続く者がいる」ことを信じて、真っ直ぐ歩む小林多喜二の姿を、井上ひさしさんが音楽劇として見事に描いた。
    拓銀時代を思い切って省いたことで、シンプルに多喜二が浮かび上がってきた。
    これを観たあとでは、小林多喜二像が大きく変わりそう。

    小林多喜二を演じた井上芳雄さんがいい。歌もとてもいい。
    そして、現実の世界をつなぐ、姉役の高畑淳子さんもいい。特高の2人もいいし、とにかくみんないいのだ。
    作曲した小曽根真さんのピアノの生演奏もいい。ピアノだけというのがいい感じなのだ。

    小曽根真さんの曲は、井上さんの言葉をうまく伝えてくれる。
    「カタカタまわる 胸の映写機」の歌が染みる。
    井上芳雄さんの歌い方がもの凄く良く、本当に染みる。
    誰の胸の中にも忘れ得ぬ場面(シーン)があるのだ。

    それにつけても、『組曲虐殺』とは恐ろしいタイトルだ。
    そして、フライヤーがとてもいい。
    登場人物全員が笑顔で押しくらまんじゅうをしている写真。
    そして、小林多喜二がどんな拷問を受けて、どんな死体になって戻ってきたのかが淡々と文章で綴られている。
    これはもの凄く辛い。
    そして、このフライヤーが、この作品を見事に表しているのだ。
    すなわち、「とても楽しくて、とても悲しい」物語であることを。

    劇場のロビーでは、「代用パン」と称した高級(笑)アンパンが売られていたが、本当の代用パンを食べたかったな。結局これも買ったけど。美味しかった。

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    2013/01/07 05:27

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