満足度★★★
憑依
ジャンヌ役の女優、楽日の舞台を拝見したが、登場の際、憑依されているという気配が微塵も無く、何らのインパクトも無かった。全体の流れは、政治というレベルで歴史が動くことを描いていたと解釈したが、それならば、ジャンヌの起こした事象は、もっと神に憑依された状態で表現すべきであっただろう。この点で演出は、登場の時点で役者にしかと注意を喚起しておくべきであった。途中から良くなったとはいえ、登場は学芸会レベル。登場時点でインパクトがあり、今後、活躍できる可能性を感じたのは、ジル・ド・レイ役であった。衣装は豪華であったが、本来、演劇は、幕が上がって以降、役者のものである。その役者が、憑依を含めて内面と身体を神々とないまぜになった空間、舞台に昇華させるには、個々の役者の持つ本質を、外部即ち作品の齎す亜空間、亜時間と不即不離の関係に保たなければならない。ジャンヌの歴史的役割も其処にこそあったはずである。もう少し、本質を見る目を鍛えるべし。