満足度★★★
優しさの中に込められたメッセージ
プロレタリア文学で知られる小林多喜二の晩年を描いた作品で、物騒なタイトルのイメージとは異なり、歌やコミカルなシーンが沢山盛り込まれていて楽しめながら、最後は重いメッセージが心に残りました。
資本主義・官僚主義を文学の力で批判する小林多喜二と、多喜二の姉、許嫁、後に妻になる協力者の3人の女性と、多喜二を見張る警察官2人による駆け引きが描かれ、シリアスになったかと思いきやドタバタになったりとスリリングな展開が魅力的でした。
2人の警察官は立場上は敵であるものの、多喜二のことをただ憎んでいる訳ではなく、共感しているところもあるという描き方に作者の優しさが感じられて良かったです。
登場人物それぞれの性格が伝わってくる情感溢れる演技が良かったです。神野三鈴さんの多彩な演技が印象に残りました。
視覚的な演出については意図が掴めず、もどかしく思いました。
6人の登場人物を象徴しているものと思われる、床に立てられた6本の細いポール状のオブジェが有効に使われていなくてもったいなく思いました。
映像が何度か使われていましたが、あまり効果が感じられず、特に最後の映像の演出は蛇足に感じられ、興醒めしてしまいました。
音楽は小曽根真さんのピアノ生演奏で、役者と息を合わせて弾いていて、存在感がありながらも抑制が利いていて素晴らしかったです。