祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~【KERAバージョン】 公演情報 Bunkamura「祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~【KERAバージョン】 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    上出来の部類
    4時間に及ぶ大作ですが、見応えがありました。

    ネタバレBOX

    4時間に及ぶ大作ですが、見応えがありました。

    登場人物も、コロスを除き、20人もいます。主人公を特定するのは困難です。各々が中心人物がとなるサブプロットが組み合わせられて、ひとつの物語が構成されています。冗漫に感じられる部分もありますが、概ね成功している、堅固な統一性を獲得出来ていると思います。
    この巨大なモザイクの彩りを、古今東西の歴史や文化芸術への作者の知見が支えています。それが醍醐味ある人間ドラマのエンターテイメントになれているのが見事です。おそらく、核になっているのは、ラテンアメリカ的な叙事詩でしょう。実際、ここからもう少し煮詰めた地点に、例えばガルシア・マルケスの神話世界があるのだと感じました。
    パスカルズの生演奏にも、南欧的あるいはラテン的と言っていい明るさがありました。興味深いのは、大バッハの『マタイ受難曲』からの引用など宗教曲的旋律です。この宗教への関心は、日本の劇作家には希有なもので、作品の大事なテーマとして見過ごせないポイントでしょう。
    感動的なエピローグも、神と運命への洞察として印象的でした。己れ自身であった娘(たち)を失った父親が二人(生瀬勝久と三上市朗が素晴らしい)、生き残ってしまった者の断念と祈りの残日が、ピアニシモの響きで胸に染みます。

    本格の芝居創り、本物への感動こそ演劇の贈り物。それを自分の問題としてどう考えるかは、客にとって生き方のテーマ。
    そんなことを、観劇後の余韻のなかで考えました。

    KERAは、持ち味を活かしながら、自身のテーマを深化させたと思います。
    これからも、その活動に注目していきたいですね。

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    2012/12/25 21:22

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