満足度★★★★★
なるほどなぁ・・
規制されたところは確かに自分も観て、
違和感を感じたところなので、
「なるほど」と思った。
アフタートークで不満を言っているところを聴いて、
その違和感なり、
作品を別の文化背景のなかで上演することのむずかしさを知った。
きっと、イランの作品を観たときにも思ったのだけど、
ある国・時代の作品を別の国・数年先に持ってくるとき、
どの程度伝わるのか、あるいはほとんど伝わらないのか、
を考えることは重要だろう。
ただ、ある時代・国の人たちに向けて作ったものを
伝わらないからと言って他の国で上演することを拒むことが良い選択だとは思わない。
(今回は歴史のものだったので割とギャップは少なかったが、ただ、日本では絶望的なくらいに隣国の資料が少ない(汗
観た人たちは、観終わった後も、
観たものに対する自分なりの考えを、
資料に色々と当たりながら、観劇時間の何百倍もの時間を時には掛け、
整理していかなければならない(汗
-----------------------------------------------------------
その作業は決して無駄ではない。
むしろこれからの時代、普通の人々のそうしたささやかな努力は、以前にも増して重要だ。
実際、60年前っすぐ隣の国で数百万が死んだと言われる戦争を誰も知らない。
そうした戦争・内戦が起こる可能性は、どこの国・時代でも常にある。
実際、極東アジアは既に昔のバルカン半島並の火薬庫に変貌を遂げているにも関わらず、
なぜかだれもそのことに気づかないフリをしている。
今ほど「反戦・反原発・反ファシズム」を叫ぶことが重要な時代も無いハズなのになぁ・・。
-------------------------------------------------------------
逆に国内の作品は鮮度が一番だと思う。
本当は、外国の作品も、上演してからすぐ、持ってきてくれれば良いのにな、と思うけれど、それは贅沢だし。
ただ、人間には「想像力」があるので、
その時、その場にいた人間には自然に肌で感じられることを、
その何百倍もの時間、資料や証言を通して、
想像し、作品の肌触りを可能な限り再現していくことができる。
この公演と演出家の講演を見る限り、この演出家はどうやら恐ろしく才能豊かな人間のようだ。
そしてリヒニッツと同じく、ひどく挑発的でアイロニカルだ
演出家には、他の多くの人が見逃すものを見通して、声を大にして言う肝っ玉もあるようだった。
(上記の特徴は、才能に直結している
なるほど。
「韓国の演劇は既に日本のはるか先を言っていて、もう追いつけない」と
人が言うのも良く分かる(苦笑
この鋭さ、このアイロニー、そしてこの挑発。
40歳(演出家の年)にしてこの若々しさ(笑
一端ではあったけれど、魅了されるには十分な欠片だった。
また、これに懲りず日本に来てほしいなぁ・・(苦笑
いや、外国の作品を観るのって、結構大変なんですよねぇ。
昔メビウスを知った時には、日本人が到底知りえない元ネタがぎっしりあるなんて想像もしなかったもんなぁ・・。
ちなみに、外国の作品で自分たちが「実験的」と感じるものは、
現地の事件や感情をモチーフにしていたりすることが多い。
直接描くと、ダイレクトに伝わりすぎるので
少し抽象的な表現にならざるを得ないんだろう。
外国人にあえて分かりにくくする意図はなく、
そうせざるを無かっただけのことで、
それでも現地では色んな反応・批判があったらしいことを知ると、
世の中は広い、と思ってしまう(苦笑
そして、FTに来た外国人演出家の多くは誰も、
アーティストぶったところが全くない(実験をアーティストぶって用いたりしない
挑戦的でかつ非常に謙虚で、尊敬できる人たちばかりだったことは言えると思う。