満足度★★★★★
演劇版落語
落ちといい、言葉の崩し方といい、間にあるものの微妙な外し方といい、非常にバランス感覚の優れた、演劇版落語とでも名付けたい作品だ。
間といえば、落語の命であるが、狭間とも読み、アイダとも読む。無論、マとも読むのである。この作品では、これら諸要素が混在し巧みにシャッフルされて、湿りっぽくなりがちな親子関係をドライに知・痴的に舞台化している。
たとえば、言葉とため息の間、言葉とオノマトペの間、言葉と騒音の間、当然、言葉と静寂の間といった具合だ。また、登場するキャラクターも一風変わっている。おかまにおなべ、幽霊に優柔不断、マゾ教師にサド女王等々。異端や異形の者達は、さながら魔の潜むが如きレッテルを張られがちだが、実際に彼らが紡ぎ出すのは、赤裸々な人間味である。
笑いながら、ほろりと涙に噎せながら、爽やかささえ持ち味に加えて軽みを感じさせる秀作である。