満足度★★★
夜の部鑑賞
ドラマチックな『曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)』と、様式性の高い『勧進帳』の2本立てで、どちらもケレンの効いた派手な演出はないものの、伝統芸ならでは芯のある演技に引き込まれました。
『曽我綉侠御所染』
腰本との不義を密告されて為に侠人となった男が周りの厚意を裏切りだと勘違いして関係のない人を殺してしまい、後に真実を知って妻と共に自害するという悲劇的な物語でした。
敵対する5人ずつのグループがシンメトリックに七五調の台詞をやりとりする趣向の冒頭場面が楽しかったです。誤解が解けて、尺八と弧弓で合奏しながら息絶えるラストがドラマチックでした。
悪役に見えて実はそうではない男を演じた尾上松緑さんの眼光の鋭い表情が印象的でした。
『勧進帳』
言わずと知れた作品で、舞台奥に2列にずらっと並んだ出囃子や、古めかしい台詞の言い回しが格調高く(その代わり何を言っているのかは分かり辛かったのですが…)、様式美と華々しさに溢れていました。
松本幸四郎さんの弁慶と市川團十郎さんの富樫のやりとりが見応えがありました。弁慶の舞も迫力と優雅さがあり素晴らしかったです。
昼の部では弁慶と富樫の役を入れ替わりで演じているので、そちらの組み合わせも気になりました。