満足度★★★
反復して増幅される感情
かつて暮らしていた家に対してのノスタルジックな思いを、先鋭的でスタイリッシュな表現手法を用いて描いた作品でした。
長女、長男、次女の3人が生まれ育った家が道路拡張の為に取り壊されるその日の3人の様子をメインにして、友達が家に遊びに来た時、長女が家を出る時といった過去のエピソードが織り込まれ、それぞれのシーンを何度も立ち位置を変化させながら繰り返す構成でした。
観客に説明するような文体、一般的な意味では下手な演技、時系列の頻繁な跳躍、ダンスのような往復運動や円環運動といった、観客を物語の世界に単純に没入させない仕掛けを用いながらも、普遍性のある感情が描かれていて、同じシーンが繰り返される内に強度が高まって行くのが印象的でした。
感極まった涙声で台詞を言うのが個人的に苦手で、作品の世界観に共感出来ませんでしたが、激しい身体表現によって感情表現を増幅させる手法が興味深かったです。照明を落とし、大音量の音楽が流れる中で激しい動きが行われていたのが印象に残りました。
役者の台詞と動きだけで十分に表現力があるので、スモークや映像、叙情的な音楽の使用は過剰に感じられました。