満足度★★★
悪夢的世界
奇形の男を巡るギリシャ悲劇を思わせるダークな物語に、障害者や性風俗業や新興宗教、国際関係といったタブー的なトピックを盛り込んだ上に笑いを散りばめた、ブラックな作品でした。
表現が古臭く感じることが多く(特に笑いの取り方と、何度もある大勢でのダンス)、前半はノリに付いて行けなかったのですが、後半は人の心の偽善的で醜い面を露にする緊迫した展開に引き込まれました。
破滅的なシーンが同時進行する終盤は混沌としていながらも、心に刺さるような鋭さがありとても魅力的でした。その次に続く有名な宗教画をモチーフにしたシーンもインパクトがありました。
物語は面白かったのですが、全体的に雰囲気がライトな感じで、もっと陰鬱なテイストが強く打ち出された方が物語の魅力が映えると思いました。
回り舞台を活かした頻繁な場面転換は視覚的に楽しかったものの、ちょっとせわしなく感じました。
最近の猟奇的な事件や映画をネタにしていたのはあまり客席の反応がなく、コクーンの客層に合っていないように感じました。
役者達はそれぞれキャラが立っていて良かったです。大竹しのぶさんの狂気を忍ばせた演技は素晴らしかったのですが、その存在感が作品の世界観から浮いて見える場面が何度かありました。
古田新太さんの抑えた演技が新鮮で、冴えない中年男性の悲哀が滲み出ていて印象的でした。