満足度★★★
奇妙な質感の5代に渡る家族劇
イギリスの3人の劇作家が共同執筆した作品で、分かり易いドラマがあるわけでもなく、かといって難解で抽象的というわけでもない独特の雰囲気があり、キャッチ―な要素がなく地味なのに退屈さを感じませんでした。
地球が破滅するまで残り3週間と判明した状況において、癌で余命わずかな長男の元に集まる家族を描いていて、お互いストレートに感情を表に出すことがないアンビバレンツな感じが印象的でした。
全裸、セックス、同性愛、残虐性(非リアルに表現されていて血生臭さはありませんでした)等、ヨーロッパの演劇界では、このような要素を入れないと評価されないのかと感じさせる要素が多く、少々辟易したところもありますが、描かれる内容としては古典的だったと思います。
シリアスなシーンの中に急に話が逸れて行く、瓢々としたユーモアのセンスが楽しかったです。
台詞のテンポが早過ぎるように感じられ、10分の休憩込みで3時間近くあるやや長めの作品でしたが、寧ろ間があっても良いように思いました。演技のスタイルに統一感がなくて前半は気になりましたが、次第に違和感がなくなって行きました。
年齢や見た目の設定に合ったキャスティングにはなっていなかったのが残念でしたが、悩みを抱えつつ強気に振る舞う母親を演じた倉野章子さんが素晴らしかったです。
上村聡史さんは転換に見せ方にこだわりがある演出家だと思うのですが、シーンの転換で完全に暗くせず椅子や小道具を運ぶ役者の姿を見せる今回の演出はスマートさが感じられず、そうする意図が掴めませんでした。
空間的な広がりを感じさせ、アンビエントな音を鳴らし続けることで静寂を引き立てていた音響が素晴らしかったです。