満足度★★
男の友情
それぞれの職業に誇りを持つ目医者と女形の歌舞伎役者との友情の物語を実際の歌舞伎役者が演じ、笑えて泣ける物語に歌舞伎の技が映える作品でした。
物語としてはベタな話で、前半は盛り上がりに欠けるように感じましたが、終盤で劇中の観客席と現実の観客席が重ね合わされる構造は生の舞台ならではの趣向で良かったです。
緊迫感のあるシーンにコミカルな演技を織り混ぜていたのは、演技としては楽しめましたが、全体の流れからすると異質に思えました。
歌舞伎の劇場を思わせる両袖の櫓以外は屏風程度しか用いないシンプルな美術に対して、照明が様々な雰囲気を表現していました。暗転時の青い光が幻想的で美しかったです。
音楽は三味線にエレキギターが絡む折衷的なもので、附け打ちだけが生音でしたが、効果音の使い方を含めて音のデザインにあまりセンスが感じられませんでした。特にクライマックスでは音楽が台詞の邪魔をしているように感じました。
中村福助さんが演じる女形役者はずっと女形の様式で演技をしていて、現実的に考えると妙なのですが、舞台で踊っている設定のシーンでは美しい踊りが素敵で、人形振りや早変わりもあって楽しめました。
中村梅雀さんは意地っ張りな医者をチャーミングに演じていました。見せ場が少なくて残念でした。