満足度★★★★
新たな視点へのお誘い
今回は“宇宙みそ汁”と“無秩序な小さな水のコメディー中の小品“利き水”“入り海のクジラ”“じらいくじら”の上演である。どの作品もアトリエでの公演に相応しい。
“宇宙みそ汁”の原作は詩である。清中 愛子の詩集とこの詩集の拾遺・数年間に書かれた作品、坂手へ送られた文章などを、演出家として坂手が構成したものだ。
これらの作品の共通項は、世界への視点だろう。宇宙とみそ汁とのコレスポンダンスの振れ幅には、当然、詩と劇とのコレスポンダンスも共鳴してくる。そして世界への目も。坂手作品は、実際、社会性の強い作品が多い。その分理知的で、距離を置いて見ることを期待される。実に優等生的作品なのだ。無論、レベルは高い。然し、芝居というものの、もう一つの面にも、そろそろ目を向けても良いのではあるまいか。つまり魅惑する側面に対してである。今迄の視座とは対極にあるかも知れないが、このような側面を自家薬籠中の物とすれば、更なる雄飛が期待できる。
今回の舞台でも、役者陣の演技は、演出家の期待に見事に応えたものであったが、もし、今後、自分の提案したような作品作りもあり得るならば、力のある役者陣にも新たな御自分を発見して頂きたい。