Goodnight 公演情報 劇団競泳水着「Goodnight」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    さりげない会話で、いつもの日常にちょっとしたいい予感を見せてくれる
    そんな作品。

    とてもオシャレな感じに仕上がったレストランのセット。
    そこで、大げさなことではない、日常にある、ちょっとしたいい予感をさせ、心をほっとさせてくれるような、そんな人間関係が繰り広げられる。

    ネタバレBOX

    どこにでもいそうな、普通のいい人たち。
    頑固な兄も、実は単に頑固というだけでなく、口下手で、人に何かを伝えるのが得意ではなく、そのことを自分も知っている。バイトの子との関係もちょっとした台詞でうまく表現していた。
    弟も器用に見えて、実は不器用。
    兄弟仲も悪そうに見えて、実はそうでもなく、いい距離感でいられるようだ。
    仲を取り持つ妹がいる、という設定が効いている。

    登場人物たちは、それぞれが今の自分を生きているという感じがよく出ている。

    彼らが、出会い、すれ違い、別れていくのだが、その微妙な関係が台詞などでいい感じに伝わってくる。
    「神の視線」のごとく、すでに知っていることや、登場人物と同じ視線で見て、「そうか」と思わせたり、観客の視線のコントロールがさりげなくうまい。

    普通の物語に、ちょっとしたアクセントで、博士や銀行員が絡まってくる。
    こういう人が絡まってくると、そこまでの全体のトーンを乱したりすることが多いのだが、これは違う。トンガリすぎないようなコントロールがいい。
    特に「博士」の菅野貴夫さんは、笑いをうまい具合に引っ張ってくる役なのだが、演出と役者さんの持っているキャラの雰囲気で、違和感なく見られる。
    変に声を張ったり、「ここが面白いとこですよ」感を、演技に滲ませることがないのがうまいのだ。

    俳優さんでは、この菅野貴夫さんと、すっと背筋が伸びている立ち姿に現れてくる、役柄の表現がとてもいい、みのり役の黒木絵美花さん、蓮っ葉な感じに見せながらも、兄弟の仲をうまく取り持つ気遣いがうまい岡田あがささん、この舞台の中で、一人固い役所の兄・竹井亮介さんが印象に残った。

    無駄な説明台詞なしでの、開店後のレストラン、さらに暗転後の5年後という設定とその後の人間関係を、やはり余計な説明台詞なしに見せる巧みさ。
    その5年間に何があったのか、ということを、声高にストーリーの牽引としないところもうまいと思う。
    観客の欲しい情報を見事に散りばめていく。

    自分のやりたいことへの距離感とか、諦めたことへの後悔とか、これから向かう未来への期待とか、不安とか、そんなさまざまな想いを胸にしながら、やはり日常を生きていく。
    しかし、その日常は、決して悲観的なものばかりではない、という予感をラストに見せてくれる。
    大成功するとか、そんな大げさなものではなく、ちょっとした、例えばいい友だちができそうだ、とか、そんな程度のさりげない、いい予感だ。

    タイトルの「Goodnight」は、「いい予感がしそうな明日へ」向かって、一歩を踏み出すための挨拶であった。

    フライヤーの雰囲気も好きだが、イタリアンレストランのメニューを模したような当日パンフもいい雰囲気。

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    2012/06/26 22:26

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