THAT FACE~その顔 公演情報 劇団青年座「THAT FACE~その顔」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    演劇作品としては秀作
    たまたま先日観たサスペンデッズの芝居と被る部分のあるストーリーですが、舞台が全く日本とは違う社会環境だから、どんなに、役者さんが熱演されて、壮絶なシーンの連続でも、心のどこかで、対岸の火事を見るような気持ちの余裕がありました。

    新劇の劇団は、ともすると、ご老齢のベテランばかりが健闘して、ちっとも若い人材が育たず、行く末が心配になる団体が多いのですが、青年座は、その点、全く心配無用な気がしました。

    ミア役の尾身さん、ヘンリー役の宇宙さんの、役者としての目覚しい成長ぶりに目を細めました。

    那須さんは、期待通りの好演ですが、酩酊状態の時の動作に、役になりきった動作ではなく、女優としての防御本能が勝った躊躇いを感じる場面が何度か目につき、その点だけはやや残念に思いました。

    ただ、これは映像と違い、毎日、無事公演を務めなければならない柵もあるので、那須さんの役者としての責任感の表れでもあるわけで、こういう壮絶なシーンを演じる舞台役者さんの匙加減はきっとさぞ大変だろうとは察して余りあるものがあるので、難しい注文だとは、自覚しています。

    演技力のある役者さんばかりだったせいか、イジィ役の女優さんだけ、ちょっと芝居っぽさが過剰に感じられ、惜しい気がしました。

    ネタバレBOX

    作家が、10代の時に発表した作品とのこと。

    その筆力の鮮やかさにまず驚嘆します。

    家族それぞれの心情が細やかに、台詞過多にならずに、的確に表現されていて、これは、日本の若手劇作家には是非テキストにして頂きたい戯曲だと感じました。

    ただ、これは、ロンドンの過呼吸だなと、日本の過呼吸体験豊富な私は、感じました。

    冒頭の、寄宿舎での、女子学生間の、儀式めいたイジメにしても、マーサのヘンリーに対する、依存と言い、日本の風土ではあまり想像できない部分が多いのです。

    だから、結構似たような壮絶体験のある自分にも、落ち着いて、演劇作品として、楽しめた芝居だったのだと思いました。

    マーサが、最後に、自分の意思で病院に向かう場面は、本当に秀逸で、名画を観るような気持ちになりました。

    いつか、那須さんの演じるブランチを観たくなりました。

    母が、病院に行った後、一人残されたヘンリーは、また母と同じように、過呼吸になり、やがてアルコール依存になるのかもしれませんね。

    ヘンリーに、ユトリロの悲劇を重ね合わせてしまいました。

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    2012/06/21 21:24

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