ストレンジャー彼女 公演情報 tsumazuki no ishi「ストレンジャー彼女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    「暗黒面」に向き合おうとする真摯な作品
     霊を召喚できる一家が奇妙な難事件を解決していくミステリーとして、テレビドラマとかにシリーズ化できそう。内容が陰惨すぎておそらく無理だろうけど……。当日パンフに書かれていた通り「暗黒面」に向き合おうとする陰惨な芝居だった。世の中の悪事や犯罪を列挙し、内蔵やら血やらを描写し、加害者や被害者の心理をトレースしていくのだから、脚本を書くのは相当しんどい作業だったのではないかと想像する。わたしはこの「なぜ人を殺してはいけないのか?」という90年代の呪いみたいな問題に対して、個人的には猟奇的な面ではあまり強い興味を持ってないんだけれども、世の中のダークサイドはむしろ見えないところで拡大しているのかなとも感じています。
     照明からしてとにかく暗い舞台だけど、地底人(寺十吾)が出てくるあたりからコミカルさが投入されて面白くなる。神なのか? 悪魔なのか? 人間を遙か遠くから見下ろすこの地底人キャラには、人間社会のウジウジした日常を突き放すような痛快さがあった(かなりキャラ濃かったな……)。淡々とした表情で的確にツッコミを放つ女(とみやまあゆみ)も、探偵ミステリーにおける助手的役割として印象に残ったけれども、後半は出番が急に減って、今ひとつ全体の中での位置づけがよく分からなかった感じ。登場人物の数のが多いせいもあるのかしら? もう少し、配役や、ひとりひとりの人物造形が丁寧であってほしかった。とある人物を演じた福原冠は、感情というものを表に出さない「透明な存在」を抑制した演技で好演していたと思う。へええ、こういう演技もできる人なんだ、と驚いた。ただ欲を言うなら、もうひとつ恐ろしい狂気を見せてほしかった。神戸の関西弁としてこれで果たして正しいのだろうか、とかそんなことが妙に気になってしまった。  
     囲み舞台ではあるけれども、人物の動きがあまりないので、場所によっては見え方がどうなのか、ということも気になった。特にディスカッションの場面になってくると、動きのなさが気になった。照明が暗いのも、演出上の効果を狙ったものとはいえ、あまり役者の表情が見えなくて少し残念。音楽の使い方もややもっさり(?)している感じ。若い観客にアプローチするにはそうした面での洗練が必要だとも感じる。現状では、演劇に馴染みの薄いお客にとっては敷居がかなり高いのではないだろうか。(以下、ネタバレボックスに続く)  

    ネタバレBOX

     ラストシーンで、ビールが飲みたいから買ってこいとか、あとご飯と味噌汁を登場させるというのは、ある種の定番とはいえ生理的に訴えかけてくるものがあった。まあ、あんな暗くて死人に近い場所でご飯を食べたいとは思いませんけども……(笑)。

    0

    2012/06/10 17:56

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大