満足度★★
オマージュは危険
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を原案にした芝居は何作か観たことがあるけれども、大体あまり面白くないのは、どうしてもジョバンニとカンパネルラの「友情」に引きずられてしまうせいでしょうか。もともと空想組曲はファンタジーを扱う劇団だと聞いてはいたので、やや寓話的な傾向はあると予想はしていたけども、にしても、宮沢賢治の世界に無批判に寄りすぎたのではないか。オマージュというものは、いつも命取りですね……。
2つの世界を行き来するのはファンタジーの常套手段で、『オズの魔法使い』でも『果てしない物語』でも『ピーターパン』でも『千と千尋の神隠し』でもなんでも「別世界に行って帰ってくる」ことを通して成長が描かれるわけですが、今作はこの妄想に囚われた男の子の未熟な自意識というものが、わたしには全然響いてこなかった。現実からひきこもって逃避することで生まれる暗い妄念の恐ろしさを、もっと丁寧に描いてほしかった。表層的な世界に留まってしまった感があります。ただ、同級生(渡邉とかげ)が感情を爆発させるシーンは心を打つものがありました。
あと、うーん、わたしにはどうもこの「やおい」に近い男の子同士の友情(恋愛?)になんだか気恥ずかしいものを感じてしまう。また、テーマや公演規模を考えると、上演時間2時間超えは長すぎたという印象も。冒頭の照明は美しく、期待感はあったのですが。