満足度★★★
存在感のある言葉と体
様々な文章の引用で構成された台詞を語るパフォーマンスで、役を演じて台詞の積み重ねで展開する一般的な演劇とは異なる作品でした。
開場して中に入ると金色に鈍く輝く衣装を身に付けた7人の役者達が既に立っていて、開演までの20分間静止したままで、始まるとまずアーシュラ・K・ル=グウィンさんによる『左ききの卒業式祝辞』が語られ、「男女の言葉」というテーマがその後に続く『アンティゴネ』で「公私の言葉」という形で受け継がれ、権力や騙す/騙される責任について、社会システムの問題点についてのテクストが時折声を重ねつつも基本的にモノローグとして語られました。
終盤は再度『アンティゴネ』の同じ場面が演じられ、今までずっと薄暗かった照明が明るくなり、冒頭と同じ立ち位置に戻って再び『卒業式祝辞』が語られ、全員が床にしゃがみ込んで暗くなって終了する、シンメトリックな構成でした。
丁寧な語りと緊張感のある緩慢な動きが、無音あるいはアンビエント的な音楽の中で強い存在感を打ち出していて、ドラマ性がないながらも美しく密度の高い65分間でした。
『アンティゴネ』のパートでの王を演じていた人の演技がオーバーで戯画的に見えてしまっていたのが残念でした。