満足度★★
SF? いや、トンデモSFだ!
原作に忠実だとしても、脚本は乱雑だと言う他はない。
せっかくの設定が、後半で台無しにされる、伏線がうまく利かない、その繰り返し。基本、SFなのだが、ストーリーの大半は、これ別にSFにしなきゃならないお話じゃないよなあ、と首を傾げるものばかり。
ところがそれでつまらないかと言うと、そうでもない。予測が付かない展開に笑いを堪えながら食い入るように観て、要所要所ではホロリとさせられる場面もあったのだから、演劇というのは単純に出来不出来だけでモノが言えるものではないとつくづく思う。ただ、作り手の意図と、受け手の面白がり方にかなり乖離が生じているのも事実だろう。演出効果とは何なのかをもう少し考えてほしい舞台だった。
ミュージカルとしては、音楽が曲想の似通ったものばかりで一本調子、メリハリに欠ける面が多々ある。ダンスは公演を重ねているだけあって、観られはするが、ブロードウェイミュージカルほどの粋には到達していない。その点でもお勧めはしかねるはずなのだが、自己陶酔型の独り善がりなものになってはいないので、不快感はない。
役者では、やはり不幸な境遇から立ち直っていくヒロインの佳代を演じた髙野菜々が、関西弁を駆使し、時にはぶっきらぼうに、時には愛らしく、その魅力を一番に発揮していた。
美術セットの工夫も含めて、見所は満載なのである。だからこれで脚本がもっとマトモだったらねえ(苦笑)。