往復書簡3~十年後の卒業文集~ 公演情報 BASEプロデュース「往復書簡3~十年後の卒業文集~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    観る側を引き込む手腕
    物語自体にも
    描き方の圧倒的なしたたかさはあるのですが、
    加えてそ登場人物たちの記憶の質感が
    しなやかに編みこまれていて、
    物語のありようを追いつつ
    もう一歩踏み込んだキャラクターたちの
    想いにも心を奪われて・・・。

    そして、観る側が物語の全貌にたどり着いたそのあとの
    ラストシーンに愕然、
    悔しいくらいにがっつりとやられました。

    ネタバレBOX

    手紙のやり取りという枠組のなかで
    まずはシチュエーションが観る側に置かれていく。
    あとで思えば恣意的にでしょうが
    冒頭の1~2シーンのかみ合わせのぎこちなさが、
    少しずつベースのトーンが形作られるなかで、
    薄れ、やがてはやりとりのリズムがしなやかに作りこまれて・・・。

    バックの音(ピアニカ?や縦笛)に
    シーンが染められ、
    次第に物語の核心が晒されていく。
    シーンの刹那にキャラクターたちの内にあるものが
    すっと差し込まれるたびに
    観る側に新たな視野が生まれる・・・。

    役者それぞれが
    手紙をつづる態のなかで
    綴る側は言葉のうちにあるニュアンスをすっと紡ぎだし、
    受け取る側は
    そこから別の空気を編みあげていきます。
    手紙を同じ色で受け渡しをするのではなく、
    質感の違いをかもし出していくことで、
    物語に切っ先が差し込まれていく・・・。
    さらには、
    演じるキャラクターが変わるごとに
    役者から描き出される色も鮮やかに変化して、
    同じリーディング劇の態に
    ひとつ、またひとつと
    新たな視座がつくりこまれ、重ねられて。
    観る側は描かれた時間の真実を求めて
    その世界へと誘い込まれていくのです。

    虚構の劇団の二人の女優には
    ひとつの色をかもし出すしたたかな集中力と
    逆にその色をにじませることなく染め替える
    表現の切れと豊かさがあって・・・。
    そのことで、観る側も
    物語の揺らぎをふくらみとして
    キャラクターたちの想いを
    身構えることなく自然体でうけとめることができる。

    やがて言葉概ね語られ
    観る側に全貌が示されたとき、
    同じ時間をすごした女性たちの
    異なる感覚が鮮やかに観る側に残り、
    彼女たちがその後過ごした時間が
    すっと観る側に満ちて・・・。
    ある種の感慨にやわらかく心を浸されて・・・、暗転。

    だから、ラストシーンには愕然としたし、
    ちょっと悔しくすらあった。
    でも、一呼吸おいて、
    物語の更なる広がりを感じ、
    ここまでに、物語に観る側を引き込んだ
    二人の役者のビビッドで秀逸な演技に
    改めて瞠目したことでした

    0

    2012/05/02 17:44

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大