満足度★★★★★
エンタメの何が悪いか!
黒澤明の『七人の侍』をアニメ化したものを、舞台化。再々演らしい。
前説の方が名乗りをあげて客席に呼び掛ける。
「この芝居は観客参加型です。お気に入りの侍が出てきたらエールを送ってあげて下さい。では練習してみましょう。」
客席の大半は女性。
「しまった!間違えた!」
心の中にそんな言葉がよぎる。
まさか野太い声でエールを送るわけにもいくまい…。
この規模の、こういう芝居を観に行くのは初めてだったのでかなり戸惑う。
ファンサービスに溢れているのは確かに良い事だが、なんか慣れない。
そして幕が開く。
機械化された侍が村を襲う、用心棒を雇おうという事になり、七人の侍が集められる。
なるほど、設定はパンクだが、ちゃんと七人の侍してる。
七人は結構なスピードで集まり、村をなんとか守りきるとこで一幕が終了。
不思議だ。
俺、泣いてる。
あれだけ戸惑ったんだが、不思議と馴染んで、涙まで流している。
スピード感のある展開、無駄にカッコイイ台詞回し。
派手な装置に照明・音響。
…この感覚、どこかで…
そう、劇団新感線にノリが近い。
こりゃ面白い。
一見、度が過ぎたファンサービスが多いようにも見えるが、しっかり本筋に復帰してくるので嫌な感じはしない。
演者が楽しんでやってるので、もうなんでもいいやと思える。
ボロボロ泣いてしまったのは、一幕終わりのゴロベエ(=高橋広樹)の死に様、そして二幕もラスト、キクチヨ(=住谷正樹)の最期。
どちらも、守るべきものの為に命を賭けた大勝負を仕掛ける。
生きたいと願いながら、守るべき命の為に散っていく様は、まさにサムライスピリッツ。
非常に漫画的でベタな展開であるが、この、ベタで漫画的というのが私のツボのど真ん中なのだから致し方ない。
深い事考えずに、清々しく号泣した。
ちなみにキクチヨを演じた住谷正樹さんはあの、レイザーラモンHG。
良い仕事してたなぁー。
後日、Wikipediaで色々調べたのだが、七人の侍の半数くらいが、『テニスの王子様』のミュージカルに出演しているらしい。
そして演出の岡村俊一さんは、結構な数、つかこうへいの芝居を演出している。
どうりでテンポが良いわけだ。
個性豊かな侍たちを束ねるカンベエを演じた加藤雅也さんが、燻し銀なかっこよさだった事は言うまでもない。
イケメンが大勢出てきてワーキャー!って芝居を心のどこかで敬遠していたのだが、そんな先入観を取っ払ってくれたいい芝居でした。
これぞ、エンタメ。
エンタメはあかん、演劇は芸術や!みたいな主張もあるだろうが、
私としては、お客様が楽しんで観てくれる事が何よりの正義です。