満足度★★
王道の人情喜劇
北野武さんの両親の半生を描いた人情喜劇で、いかにもな分かり易いストーリーテリング・演技でしたが、笑わせ方や泣かせ方にあまり強引さがなく、引いた見方にならずに観ることが出来ました。
物語は関東大震災の日から始まり、第二次世界大戦を経て、貧乏で苦しいながらも逞しく生活する様子が暖かくユーモラスに描かれていました。これからは学問が大事と考えるさきと、職人の子は職人で良いと考える菊次郎がぶつかり合いながらも共に生きて行く姿が頻繁な場面転換を挟みながら軽快に進み、客を飽きさせない構成となっていました。
自然な伏線の張り方で、ある古典芸能のストーリー引用がされていて、洒落ていて面白かったです。
メインのセットと、その手前の空間と、1層高くなっている奥の空間を使った空間演出は良かったのですが、それを有効に利用したスムーズな転換にはなっていなかったのがもったいなく思いました。
転換の繋ぎにミュージカル的なシーンが何回かあり、もっとたくさん歌を聴きたかったです。
タイトルロールの陣内孝則さんと室井滋さんはコミカルに若い頃から晩年までを演じていて楽しかったですが、出演者の全員が分かり易いお約束的な演技だったので、深みを感じることがありませんでした。