満ちる 公演情報 MODE「満ちる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    なかなか良い戯曲
    MODEにとって、14年ぶり(!)の新作書き下ろしということだ。

    物語の展開、台詞、そういうものに込められた内容がとても素晴らしいと思った。

    思ったのだが……

    ネタバレBOX

    思ったのだが、楽日が近いから皆さんお疲れなのかどうかはわからないが、役者間のリレーションとか、台詞の間とか、なんかそんなのがイマイチ。

    ベテラン勢は別として若手の中の何人は、「台詞を言っている」にしか聞こえず、客席で唸ってしまった(いや、本当に唸ったのではないが・笑)。
    初日だったら、「固いかな」と思ってしまうところだったが、もう明日は楽である。そんなはずはないのだ。

    ベテラン勢の方々は、とても自然で、物語を支えていたと思うし、もし、そういう役者さんたちばかりだったら、相当面白かったのではないかと思ってしまった。

    奇才と言われた老映画監督を演じたすまけいさんは、MODEのHPによると当て書きのようで、もう演技なのか、本当にそうなのかわからないほどリアルだった。
    本当に言葉(台詞)が出てこないのか、演技なのかがわからないが、まさに舞台上の設定にドンピシャで、一体撮影中の映画はどうなるのだろうと思わせる。

    モノ作りに対するこだわりと親子の微妙な関係がうまい具合にミックスされ、言わなくても伝わったり伝わらなかったりするあたりや、娘の満ちるをめぐる男性たちの感じ(老監督との血縁疑惑も含め)、老監督の人間模様も垣間見える素晴らしい戯曲だった。

    台詞の感じもいいのだが、どうもタイミングなどの悪さで、本来は笑いが起こるはずであろうシーンが笑えない。空回り感がある。
    そこが辛い。
    もう少し腰を落ち着けてやってほしかったなあ。

    観劇後は相当いい感じになれるであろう内容だけに、役者たちのあの感じは残念。

    開演前に『キューポラのある街』の東野英治郎演じる父親と娘の吉永小百合のやり取りの台詞は、この舞台の内容を示唆しているようで面白かった。
    ただ、映画監督ということでの、映画へのこだわりが、古き時代を懐かしむ、で止まっていたようなのがもうひとつだったかな。
    老監督は過去の人になっている、という悲哀なのかもしれないが。
    だから「奇才」「奇才」と周囲が連呼するのは、年老いて現役ではない監督への皮肉のようにも聞こえてしまったのだ…。

    セットは、舞台の前面に映画のスクリーンを模したような枠があった。
    しかしそれは「舞台の上はつくりものである」と、ずっと言われているようだったし、なにより正面の席じゃなかったから、いつも視線に入り鬱陶しい。
    また、映画というテーマから、暗転のときに必ず映写機の音が入るのも、「つくりものです」と宣言しているようで、これもマイナス効果ではなかっただろうか。

    それと何より、セットがここの舞台のサイズに合っていないため、左右に役者が出たり入ったりするところがやけに見えすぎで、その距離が長いのでスピーディさに欠け、役者の登場が早めにわかってしまうのも、なんだかなー、ではあった。

    特に下手の2階に通じる階段は、上ってから半分は黒く塗ってあるものの、下り階段になっていて、役者が2階に上がったと思ったら、下がっていくのが見えてしまうのが、(もちろん舞台のルールとして見えてないことにはしようとするのだが)イマイチ。
    だから、2階から勢いよく降りてくるシーンは、役者が舞台袖から階段まで来て、ゆったくりと黒く塗ってある階段を上ってから、やおら勢いよく降りてくるという演技になるわけなのだ。それはないよな−。
    これもまた「つくりものです」と言われているようで、「舞台のウソ」が見えすぎて興が冷めてしまうのだ。

    単純にその部分は隠せばよかったのではないだろうか。
    セットのサイズ的にはスズナリあたりだとぴったりしそう。

    戯曲がよかっただけに、そういったことはなんとかならなかったのかなー、と思った次第である。役者ではなく演出の問題かな?

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    2012/03/31 06:28

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