ピーター・ブルックの魔笛 公演情報 彩の国さいたま芸術劇場「ピーター・ブルックの魔笛」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    喉に刺さった「あれっ?」っという小骨が、あっても…
    そこはピーター・ブルックだ、っていうことにしておこう。

    オペラ入門編……というわけではなく
    オペラ・マニア向け……というわけでもない。

    オペラっていうキーワードからの接近はどうかな、と思ってしまっている。

    ネタバレBOX

    つまり、これってどう観たらいいんだろうか、とフト思った。
    確かに『魔笛』を上手い具合に90分という時間にまとめて、ストーリーとしてはよくわかる。
    何より、まったく退屈させない。
    ユーモアたっぷりだし。

    だけど、オペラとして観るとどうなのかなという気持ちが少しある。
    いや、オペラと銘打ってはないの…かな?
    「ピーター・ブルックの」とは銘打ってある。
    「ピーター・ブルックの」ってのは、ミソだなぁ。

    そういうのですぐに思い出すのは、「川越シェフのキムチ」とかそんな感じのものだ。
    まあ、キムチは横に置いておいて、ピーター・ブルックという人については、演劇素人の私には「凄い人みたい」程度のことしか知らない。
    だけど、昨年は、SPACで『WHY WHY』を観た。

    それは、大昔観た『マルキ・ド・サド演出〜略〜と暗殺』という映画にビックリした想い出があるからで、その舞台は観てみたいと思ったからにほかならない。
    浮き足だって、調子に乗って静岡まで出かけてしまった。

    で、前置きが長すぎたのだが、「どう観るか」なのだ。
    もちろん「どう観るか」なんていうのは、本来バカな話で、「観たまんま」でいいのではあるのだが。

    実際観たものは、とても若々しくって、軽やか。
    90分はあっという間。
    客いじりっぽい演出もあり、笑いも起きて楽しいものだった。
    それは間違いない。

    しかし、オペラという狭い枠から覗いていると、「歌」が気になってしまうのだ。
    もう少しなんとかならなかったのか、という印象だ。

    さいたま芸術劇場の大ホールというのは、思っていたよりも小さく(『ハムレット』行ったけど、全体を見たのは初めて)、生の歌声が気持ちよかったのだが、オペラのもの凄さというものがなかった。

    いや、もの凄くなくていい。
    オーケストラじゃなくたって、ピアノだって十分ではある。

    だけど、例えば、夜の女王が歌う、ソプラノを活かした高音のパートの、「あれっ?」感は、ちょっと腰が砕けてしまった。
    オペラファンでもないし、ましてやマニアでもないのだが、歌声のあの感じに「あれっ?」と思った人は多かったのではないだろうか(その日だけのことかもしれないのだが、そうだとしても、それはない)。

    と、書いたが、そうでもなかったようなので、多くの観客は、いわゆる「演劇」の延長としての、「歌のシーン」として観たのかもしれない。
    というより、あるがままを受け入れた…とか。

    オペラに比べて歌がどうこう、ということではなく、そういう視点から観ればまた違った景色が見えるのは確かだと思うからだ。

    結局、とても歯切れの悪い書き方をしているのは、そこんところが、喉に刺さった小骨のようで、どうもすっきりしてこない。

    オペラをカジュアルにして、自分の手中に軽く納めてしまった、ピーター・ブルックという人は凄いな、と思う半面、多くの人が知っているモーツアルトの『魔笛』だから、その歌はやっばり比べてしまうのは当然で、そこでの「あれっ?」は、やっぱり気になってしまう。

    『WHY WHY』でもそうだったが、オペラまでこんなに、シンプルしてしまうのは、なんてカッコいいのだろうと思う。
    自信というか、余裕を感じてしまう。

    なにはともあれ、結局のところ、さいたまに行っただけの価値はあったし、なによりピーター・ブルックという、ブランドに弱くなってる私(実はよく知らないけど、前観た『WHY WHY』が面白かったし、『マルキ・ド・サド演出〜略〜と暗殺』で驚いた)としては、星は甘くならざるを得ない。「あれっ?」という小骨があったとしても…だ。


    そうそう、あのラスト、本来は大団円で、めでたしめでたしのシーンがあるはずなのだけど、あえてそれを「並ぶだけ」にして見せた、演出も好きではある。
    観客側の、変な間を、ひょっとしたらピーター・ブルックは、幕の後ろでほくそ笑んでいるんじゃないかと思ったりしているからだ。

    あ、あともうひとつ。「魔笛」が、マギー司郎の手品ぐらいの感じで、タミーノの手の中でずっと浮いているっていうのも、おちゃめな感じでよかった。

    ピーター・ブルック、また来たらまた観るだろうな。

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    2012/03/26 07:07

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