満足度★★
ブラックな喜歌劇
落語の『死神』をベースにしたオペラ作品で、わずかなセットと少人数の歌手と演奏家によるコンパクトな設えでの公演でした。
葬儀屋の男がセクシーな女の死神と出会い、死神の力を用いて医者として多くの人の命を救って金持ちになったものの、人を救った分だけ自分の寿命が短くなって死んでしまうという物語が際どい言葉を用いながらブラックユーモアとエロティシズムを散りばめて描かれていました。
音楽的には調性と無調性を行ったり来たりしつつ、ジャズやタンゴ、日本民謡的な旋律も時折聞こえてくる、バラエティに富むものでしたが、あまりメリハリがなく、後半は少し飽きを感じました。
演技が大袈裟だったり、アンサンブル役の合唱の人達が絶えず意味の感じられない稚拙な小芝居をしたりとうるさく感じられて、作品の魅力を失わせているように感じました。途中で映像が用いられ、有名人の写真が映し出されていましたが、表層的なウケ狙いにしか見えず、センスが感じられませんでした。視覚的にも物がゴチャゴチャしていて、美しさを感じませんでした。
むやみに説明的な要素で時間や空間を埋めようとせずに、余白を活かした演出をして欲しかったです。