満足度★★★★
【静けさ】の 対になる作品。
吉行さんは真摯だ。
多分、普段から内に秘めたる思いは、それこそグロテスクな思いを伴っているだろうと思われる。
しかし紡ぐ物語は至極丁寧で、
それも急がずゆっくりと、ともすれば遠回りをして結論へ辿り着く。
その手法は僕が最初に観た作品から、ずっと一貫している。
今回の作品、
吉行さんは元の劇団をお辞めになり、新しく立ち上げた劇団でのReスタートである。
どのような思いでこの作品を上梓されたのか、想像に難くない。
現在と過去を行き来しつつ、
どうにもならないグジャグジャとした人間関係を懇切丁寧に描き上げる。
高校生のころからの仲良し三人組の愛憎劇。
切なくて悲しい物語だ。
吉行さんは前回公演時に例の地震を体験している。
しかもその時に上演された作品は、地震をテーマにした作品であり上演するかどうかという問題すら提議された作品でもある。
しかし、
作品は上演された。
僕はその時のコトを思い出せる。
はっきり言って、その時の公演は・・・というか他の演劇公演も、コンサートも空席が目立っていた。
何を好き好んで、未曾有の大震災の時にエンターテイメントを追求してしまうのが許されるだろう?という事実だ。
その 『静けさ』 という地震から起こった悲劇を淡々と描いた作品には、あまりにタイムリー過ぎて作った側も、演る側にも相当な負担がかかる公演であったということだ。
そして劇団を変え、新たな体制で挑んだ作品の当日パンフレットに生々しい当時の記述があった。