満足度★★★★
子供の命
法廷劇の名作『十二人の怒れる男』を思わせる、議論のやりとりをストレートに描いた作品で、臓器移植を巡る会話からもっと広い範囲での様々な問題が透けて見える、考えさせる作品でした。
2人の進行係の立ち会いの元、一般市民の中から審議員として選ばれた7人が心臓移植を待っている2人の子供のどちらに移植するかについて議論する90分間をそのままリアルタイムで描いていて、いち早く決定しなくてはならない性質の議題なのに議論すればする程、悩む要因が増して行って決定が出来なくなるジレンマがリアルに感じられました。
経済や政治、報道などの問題点がメインの議題から自然な流れで浮き上がり、押し付けがましくないのが良かったです。
役者達はキャラクターを誇張し過ぎず、最初から最後まで出ずっぱりの中、自分に台詞がない箇所でも細かく演技していて、現実に居そうな雰囲気が良く出ていました。
時間や空間の飛躍や省略がなく、照明の演出もないストイックなリアリズムのスタイルで進む中、効果音だけが非現実的に鳴り響き、場面の雰囲気を表すのでもなく、場面転換を示すのでもない、不思議な使われ方がされているのですが、日本の今後を考えさせる最後になってその意図が分かる、構成的な使い方が見事で、美しくかつ恐ろしかったです。