満足度★★
演奏は良かったのですが…
新国立劇場オペラ研修所の研修生をメインに据えた本格的な公演で、同じ時代に活動した2人の作曲家の1幕オペラを時代と場所を同じ場所に置き換えた、対照的な悲劇と喜劇の2本立てでした。
『フィレンツェの悲劇』(オスカー・ワイルド原作、アレクサンダー・ツェムリンスキー作曲)
織物商の夫婦の元に国の王子が来たことから生じる三角関係の末の悲劇を描いた物語で、めまぐるしく転調する仄暗くドラマティックな音楽が美しい作品でした。
王子を演じた伊藤達人さんは演技は棒立ちで表情も乏しかったのですが、輝かしい歌声が魅力的でした。夫を演じた山田大智さんは歌は少々弱く感じましたが、演技が良かったです。
『スペインの時』(フラン・ノアン台本、モーリス・ラヴェル作曲)
時計屋を舞台に魅力的な女性が何人もの男性を翻弄する喜劇で、役者達によるダンスもあって楽しい作品でした。ラストの重唱がユーモラスでした。
ヒロインの吉田和夏さんが演技も歌もチャーミングでとても素晴らしかったです。
どちらの演目も本編が始まる前に新国立劇場演劇研修所の役者達による、ほとんど台詞のない芝居がプロローグとして演じられましたが、本編との関わりが薄く、芝居としても面白くなくて無駄に性描写ばかりが目立ち、演出家の自己満足にしか感じられませんでした。逆に本編が始まってからは演出に力を入れた部分が感じられませんでした。
余計な付け加えをせずに、スコアに書かれている時間の中でアイディアを見せて欲しかったです。
演出は期待外れでしたが、歌唱については1幕モノということもあって、途中でパワーダウンすることもなく楽しめました。飯守泰次郎さん指揮によるオーケストラも色彩感豊かで良かったです。
作曲家と同世代の画家、ジョルジョ・デ・キリコの絵画を立体化したようなセット(壁のグラフィックはアンリ・マティスの切り絵風でした)が面白かったです。
最前列の席だったので、舞台手前の上に出る字幕がかなり見上げないと見えず、字幕を見るのは諦めたのですが、出来れば舞台両袖に字幕を表示して欲しかったです。