満足度★★★★★
勘九郎襲名公演ですが
仁左衛門様目当てで行ってきました。夜の部です。
最近、3000円前後のチケット代に慣れてしまったので、歌舞伎の、特に今月の平成中村座のチケットは高すぎると思っていたのですが、やはり観てしまうと、全然高くない。というか、もう一度見たいと思いました。
傾城反魂香、通称吃又。
仁左衛門さんの又平に勘三郎さんのおとくという組み合わせは、もうこの先、観られないと思うのですが、本当によかったです。
「腕も二本、指も十本」のくだりでは、本当に涙が出たのですが……その涙が、引くおそろしいできごとが!
いえ、大したことじゃないのですが(私的には大したことだった)、石の手水鉢の後側に描いた絵が表に抜けて浮き出てくる、あの名場面で、出て来た絵があまりにもお粗末だったのです。
まず、なかなか抜けてこないので、大丈夫かしら 「かか、抜けた」に間に合うのかしら とドキドキしていましたら、出て来たのが、昔、私が落書きで書いたツルハマルマルムシみたいな顔(笑)
筆を持った手だけがやたらはっきり書かれていましたが、あとは薄くてふにゃふにゃで見えない。
あれ、中の人が描いているという話、本当だなと思いました。
今まで吃又は何回となく観ていますが、今回の絵には衝撃を受けました。笑撃というか。
とにかく、涙が引っ込みました。が、まあその後はめでたい場面なので良しです。
土佐将監の奥方の役が無くなっていて代わりに下女になっていたのです。なんでだろう?と思っていたら、わかりました。
又平が将監から貰った着物に着替える場面、普通ならおとくが甲斐甲斐しく着付けるのですが、おとくではなくその下女が着付けているのです。
ああ、勘三郎さん、普段こういう役しないから。
着替える夫を見つめて「いい男だねぇ」とか言って笑いを取っていました。着付けはできませんでしたが(失敬)、その後の鼓は立派でしたよ。
そして、勘太郎改め勘九郎の御所五郎蔵、仁左衛門さんがご指導されたそうですが、すごく基本に忠実。新勘九郎丈の芸に対する真剣さが窺われました。
それがややもすると、真面目にやりすぎていて面白みに欠ける。
というか、ちょっと華がない。
華だけはある海老蔵と並ぶと、五郎蔵と土右衛門「いい男対決」では負けてしまうところもありました。
でも、だんだんよくなると思います。まだ初日三日目でしたから。千秋楽近くになると違う印象になると思います。
それもあって、もう一度観たいと思ったんですよね。
(あと手水鉢の絵の進化にも期待・笑)
この演目では、笹野高史さんが出ていて、とてもいい味出していました。大向こうさんからも、ちゃんと「淡路屋」と声がかかっていましたよ。
歌舞伎なんで、基本ネタバレというものは無いと思いますが、口上は楽しみにしている人のために隠して下に書きます。