『THE BEE』English Version ワールドツアー 公演情報 東京芸術劇場「『THE BEE』English Version ワールドツアー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    繰り返される「暴力」を描く難しさ
    野田氏は若いときに自分を評して
    「明るく爽やかなうえ、芯まで暗い
    ---考えれば考えるほど分析気質」と書いたそうですが、このお芝居も暗い暗い。これほどのネクラはないんじゃないかって思うほど(NODA・MAP公演は大人数による豊かさが救い。小人数の番外編のほうが暗いと思う)
    報復の連鎖、暴力の連鎖を描いて、再演を重ねた本公演の評価は定まったものなのだろうけど、始めてみる者としては観て改めて味わう恐怖感もあり。

    当日券は、前日12時に専用ダイアルで予約。毎回10枚程度あるのでは?意外と簡単に入手できました。

    ネタバレBOX

    恐ろしいのは、
    朝起きる、ひげをそる、朝食を摂る、背広を着る、(相手からの)封筒が届く、子供の指を切り落とし刑事に渡す、その後オゴロの妻を犯す・・・・
    この一連の流れが日課になっていく様子が描かれていること。
    良識あるイド氏(名前自体が精神分析みたい)の暴力性が一度発露した後は、日常の中に埋め込まれていくこと。・・・状況違えど、児童虐待やDVは、「ひげそりと、朝食と、暴力と、強姦」がきっと日常サイクルの中に埋め込まれているんだろう、そういうどこにでもある怖さだと思う。

    この公演では、イド氏を演じるのは、キャスト4人中唯一女優のキャサリンハンター。オゴロの妻(美人豊満で夜の仕事をしているらしい)を演じるのが野田さん。キャサリンは小柄だけど、スーツを着て胸張って声も低くて、男性にしか見えない。野田さんは序盤は別の役を演じるため、化粧はせず、派手な衣装を引っ掛けるだけで女性をあらわしている。男女逆転していることで強姦シーンが生々しく見えることはない。

    また「指を切る」シーンも、これも一種の「見立て」であろうが、鉛筆を指に見立てて、それを折る(ポキッと音がする)。これも暴力の描き方としては明らかに抑えたものである。

    「暴力」について、真正面から語ろうとする場合、恐らく「暴力的描写」は邪魔なのだろう。描写が生々しく扇情的であると、私たちは過度に自分に引き寄せて「痛い」「目を背けたい」と思ってしまうだろう。だからリアルな暴力は描かない。

    リアルに描かず、様式的だからこそ、身体的な強さが求められるのだろうなと推測。キャサリンの身体が一際目を惹くけど、グリン・プリチャードさんは、警官から一瞬にしてオゴロの息子、オゴロの息子から一瞬にしてオゴロその人に変わったり、まったく緩みなく進行するから息つく暇がない。やっぱり「すごい」と思う。

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    2012/02/29 15:06

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