2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」 公演情報 彩の国さいたま芸術劇場「2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「企み」がすごい!舞台美術必見!
    上演時間3時間40分。密度の濃い時間を堪能しました!

    まず全体の企み、完璧に蜷川氏にお手上げです。
    とりわけ舞台美術は驚きです!(ネタバレに当たるので・・・)
    さい芸大ホールインサイドシアター以外ではなかなかできない試みでは?

    「蒼白の少年少女」の「蒼白」は彼らの世代の戦略であるということを、蜷川氏はご存知なのであろうな、と思いました。
    このお芝居「ハムレット」は、世代間格差の問題を問い、旧世代の新世代への恐れを描きながら、世代間理解が可能かを問い、あるいは革命的世代交代が起きるとしたら、という仮想を試みているとも読める、そういう企みをまた感じてしまうのです。

    彼らより上の世代はそれを心せねばなりませんと、言いたいのであろうかな、と。そのリトマス試験紙がこまどり姉妹だったと思うのです。

    こまどり姉妹ですが、一番ぶっ飛んだのは、ハムレットがオフィーリアに「尼寺へ行け!」と叫ぶ、そのときに登場!したことでした。

    では、こまどり姉妹の登場で、川口覚さんのハムレットと、深川美歩さんのオフィーリアは喰われてしまったか、というと、そんなことはありません。(深川さんは昨年の「美しきもの~」の伊藤野枝役が印象深いですが、今回は真反対のオフィーリアでありました。
    お二人だけではなく、ホレーショーもガートルードも名前のある役だけでなく、旅芝居の「黙劇」部分の役者たちもよかったです。

    ネタバレBOX

    さい芸大ホールインサイドシアターということで、普段舞台となるところに座席を持ち込んで、三方囲み舞台で客席から見下ろす感じなのですが、舞台床がガラス張りでその下(奈落)が見通せる仕掛けになっています。この「奈落」は開演前は楽屋として、役者たちが着替えたり化粧してたりが見えます。天井からシャンデリアが降りてきて「開演」。その後は、床の下(ガラスの下)が第2の舞台として、役者たちは2段構造の舞台を走り回ります。で、逆にこのガラスの床とシャンデリア以外の美術はありません。

    このガラスの床と奈落の底、の2重構造の舞台の効果は圧倒的で、
    ・楽屋を見せることで高まる「お芝居ですよ」雰囲気、
    ・ガラスの箱の中で演技しているように見え「標本箱」のような印象もある、
    ・地下、に当たるので、地下=墓場、もう死んでしまったものの物語
    ・・・そういう何重もの「虚構性」仕掛け作りに成功している

    ・王、王妃が現れると、それ以外のものは下に下がり、上下関係を見せ付ける。
    ・あるいは簡単に踏みにじることもできる
    ・ガラスの箱であることで、王が王国を掌握している
    ・・・そういう何重もの抑圧感を表現できる

    ・亡霊は、舞台の下からせりふを言う場面がある、それに対してハムレットが「天晴れモグラ殿」と答える。
    ・また、オフィーリア埋葬の場面では、文字通り
    ・・・戯曲に何回も「地下」が描かれている、それをそのまま表現できる

    ・だいたい、ガラス箱のような王国「デンマーク」だからこそ、「箍(たが)が外れてしまった」のせりふは意味を持つかも

    なんて、いろいろ刺激され、とにかく、ガラス張りの舞台と奈落の底、この二重構造の舞台の「企み」に痺れてしまいました。

    ネクストシアターの演技に、こまどり姉妹の企みも加え、これは4000円の価値以上のハムレットと思います。

    0

    2012/02/21 21:48

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大