vision 公演情報 温泉ドラゴン「vision」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    印象が沁み入り刺さりこんでいく
    観終わって、頭では飲み込めた物語があって
    このように感じたというのはあったのですが、
    それとは別の色の強さのようなものが
    あとからどんどん沸いてきて・・・。

    記憶におかれたものが
    薄れていくのではなく
    広がっていくような舞台でありました。

    ネタバレBOX

    真冬の公演なのに
    冒頭の日差しが印象に残る。
    男とそこに現れる女性、
    それぞれに場の熱をすっと立ち上げる技量に溢れていて。

    そこからの展開たとえば汗臭さのようなもの、
    あるいは男たちの無骨さや純情さが
    観る側を違和感なくその世界に引き込んでいく。
    それぞれに「訳あり」であることは
    容易に想像できるのですが・・・、
    そのほどけ方がなかなかにしたたかで・・・。
    でも、そのトーンにゆだねて舞台を見ているうちに
    気がつけば
    ある種の歪みというか狂気のようなものも
    したたかに場に織り込まれていく。

    鉄パイプの無骨な仕切りのニュアンスが
    男の内心の切り分けとして浮かび上がって
    物語の輪郭が観る側を閉じ込める。
    それぞれの役者たちの描き出すものに
    行き場を見失い
    現実と妄想の端境を漂う感覚に
    観る側が流されていく・・・。

    うまく言えないのですが、
    記憶のなかに現実と妄想が重ねられる中、
    舞台からあふれ出すさまざまな質感があって・・、
    その中に
    抜き身のまま刀を包んだような危うさと
    息が詰まるような重さと、
    寄る辺を失ったような軽質さと
    流浪感、
    さらにはどうしようもない閉塞感などが
    とても繊細かつ傍若無人に
    乗せられていて・・・。
    そして、それらは、
    この座組みだからこそ表しえる感覚にも思えて・・・。

    観る側を縛りつける力も強いのですよ。
    女性の存在からあぶりだされるもの、
    場を引き寄せるだけ引き寄せての
    ぞくっとくるような啖呵の切れに
    息を呑む。
    男が幻覚のように観る同僚との空気に
    釘付けになる。

    狂気の果てを通り過ぎての
    ラストシーン、
    冒頭に戻っての強い光、そして役者達がかもし出す熱、
    ループしていると思った刹那に、
    さまようような
    行き場のなさに取り込まれる。

    観終わった直後よりも
    時間がたってからのほうが
    その感触の記憶は強くなって・・。

    多少、間のとり方や、
    会話のかかり方にラフな部分もありはしたのですが、
    それらを一笑に付すほどに
    強く、でもしなやかに
    観る側に焼きつくような何かを持った
    作品でありました。。








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    2012/02/21 11:02

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