満足度★★★
エキサイティングなビジュアル表現
ヴィクトル・ユーゴーの長編小説の一部を昨年亡くなったローラン・プティがバレエ化した作品で、クラシックバレエでは用いられない動きも多く、モダンな感じでした。悲しい物語ですが、視覚的には賑やかで楽しかったです。
主要登場人物4人の内、女性は1人だけで、男性だけの群舞も多く、女性的で優雅という一般的なバレエに対してのイメージとは毛色が異なっていました。
エスメラルダを演じたボリショイバレエのプリンシパルであるマリーヤ・アレクサンドロワさんは立ち姿だけ圧倒的な存在感があり、難しい動きでも軸がぶれずに完璧なバランスを保っていて素晴らしかったです。カーテンコールでの余裕と可愛らしさを感じさせる振る舞いも魅力的でした。
カジモドを踊った菊地研さんは常に右肩を吊り上げた状態ながら軽やかに踊り、感情が伝わってくる演技でした。
打楽器協奏曲と言っても良い程に活躍する打楽器群の変拍子のリズムに乗って群舞があるときはゾンビの群れのように、あるときはキビキビと踊るのが気持良かったです。
舞台奥が階段上になっていて所々に開いた穴から床下で行き来できるようになっていたり、階段の手前に可動式のステージが暗転しないで両サイドから出てきたりと、バレエにしては大掛りなセットが目を引きました。
イヴ・サン=ローランによる衣装は有名なモンドリアン・ルックや、とても背の高い帽子、鮮やかな色彩など、当時のパリのモードの雰囲気を感じさせ、楽しかったです。
それぞれの要素はレベルが高いのにも関わらず、それらがドラマとしての表現に結び付かない感じがして、あまり心動かされれなかったのが残念でした。