満足度★★★★
マジカルな舞台表現
ドストエフスキーの長大な小説をほとんど台詞を用いずに身体表現で描き出し、90分弱のコンパクトな作品にまとめあげていました。
原作を読んだことがなく、概要もほとんど知らない状態で観たので、原作をどのようにアレンジしたかを楽しむことはできませんでしたが、動きだけで人の様々な感情が表現されていて、知識がなくてもとても楽しめました。
一段上がった床が舞台の中央に組まれていて、そこに大きなテーブルと数脚の椅子が配置された空間の中を所狭しと動き回り、同じシーンを繰り返したり、時系列を入れ換えたりしながら、カラマーゾフ家の3兄弟とその父の関係が描かれていました。
ストップモーションやスローモーションなどマイム的な手法を用いて生身の体だけで時間や空間が歪んで感じられるマジカルな効果を出していて、舞台ならではの魅力が溢れていました。客の視線を上手くコントロールして、手品的な技を見せたり、シーンの転換をシームレスに行ったりと、そろぞれの動きに必然性が感じられました。衣服やコップ等の小物の使い方が巧みで楽しかったです。
作品のヴォリュームに対してウケを狙った演出が多すぎると思いました。ユーモラスで面白かったのですが、もっとシリアスな表現が続いても全然飽きさせないと思いました。
唯一の女性出演者である藤田桃子さんが怪我をして急遽江角由加さんに交代になっていましたが、そのことを感じさせないクオリティの高さで素晴らしかったです。