乱歩の恋文 公演情報 てがみ座「乱歩の恋文」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    良くできている
    なかば伝説化してしまった感のある江戸川乱歩について、
    観劇後にこんなに爽やかな気持ちを抱かせる作品になるとはちょっと想像がついていなかったので
    (てがみ座自体、みきかせ以来です・・(汗)
    意外であると同時に興味深くもありました。

    自分自身、中学生くらいのころから江戸川乱歩というと
    筋肉少女帯とかそういったイメージが(勝手に)あって、
    新青年でもどちらかというと牧逸馬とか、
    池袋より鎌倉な、
    エログロよりはスマートめな方?に走ってしまう感じで(普通そうだと思うのだけど・・)、
    それほどガッツリ積極的に読んでいたわけではないのですが、
    それでも幻想文学の中では乱歩は避けて通れない雰囲気でもあり、
    そういった点でも乱歩は
    自分には探偵小説家というよりかはむしろ幻想文学家でもあり、
    また、有名な割に「・・ちょっとキツくない?これ(汗」
    と、こっちがへこたれるようなものを割とよく書いている気が・・。

    ただ、そういったものも割と無菌化されてきた感のある東京とか、
    その頃はできたばかりのきれいな中高校(母校)の校舎であるとか、
    帰り道の渋谷ではフレンチポップが流行っている(きらきらした音楽が街角に溢れた良い時代だった(苦笑)のに、「人面椅子」はちょっと・・
    という当時の時代の感覚とは無縁ではない気が(苦笑

    大正~昭和初期の浅草に生きていれば、こういった感覚も
    それほどではない・・・こともない?

    以下、ネタバレへ~

    ネタバレBOX

    物語のほぼ全てを、奥さんの平井隆子の視点から描いているのが
    共感しやすく、また爽やかな感のある理由でもあるのかな、と。

    乱歩を・・
    探偵小説をたくさん作った、猟奇的な物語の創造主というよりかは、
    潮風に導かれて渡った島で
    島の子供たちに話を聞かせたり、
    海の匂いを嗅ぎながら、古くから伝わる言い伝えに耳を傾けたり、
    物語の世界に身を浸すことを純粋に愛した青年として描いています。

    人づたいに紐解かれる物語の世界に包まれていることが何よりも好きで、
    ワクワクしながら次の展開を待つ子どもたちの瞳を前にすれば
    何か語って聞かせずにはいられない。

    自分も瀬戸内海の島々などをまわってみたとき、
    海に近しい島の空気というのが、
    非常に濃密な蜜のような何かを含んでいることに気づきました。

    海の流れというものは、古くからの人の魂の流れでもあります。

    その流れのなかに生きるということは、
    まるで精霊の流れのなかで眠り、神話の世界を生きているみたいな
    そんな不思議さを感じました。

    乱歩が、
    島で物語を採集しているときに出逢った隆子と結婚し、
    自分の紡いだ物語をその隆子に語らせて、
    自分の耳で、その音を聞いてから校正していたというのも、
    どこか自分の物語に島の香りを封じ込めたかったのかな、とも思ったりします。

    考えてみれば、
    大阪の海の道の上流に瀬戸内海の島々があるみたく、
    浅草を含めた東京の海の道の上流には、鳥羽があったりします。

    遠く離れていても、物語を紡ぎながら、
    乱歩は自分に物語の息吹を教えてくれた島のことを
    忘れたことはなかったのではないかな、とも思うのです。

    はっきりと台詞で読まれることはないのですが、
    乱歩の世界が、誰によって最も大きく支えられてきたのか、
    というのが良く分かる、良い芝居だったと思いました。

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    2012/01/27 23:16

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