ある女 公演情報 ハイバイ「ある女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    映像が作りこまれていると思っていたら
    舞台から、
    冒頭やシーンごとに差し込まれた
    その映像の作りこみではないと支えられないような、
    ぞくっとくるようにリアルで濃い感覚が溢れだしてきて。

    やられてしまいました。

    ネタバレBOX

    冒頭、そして要所で差し込まれる映像の作りこみに少々驚いたのですが
    それが舞台のコンテンツに馴染むことこのうえない。
    舞台にある、恣意的に緻密につくられたチープさと
    それらで構成される業のようなものの奥深さ、
    さらにはそこはかとなく織り込まれた
    そこはかとなく肌に触れる生臭さまで・・・。
    この映像だから支えられるのだと思うような世界が
    舞台からやってくる。

    いろんな刹那がとほほと可笑しいのですが、
    それが、どうしようもない(褒め言葉)リアリティに色を変えて
    積もる。
    削ぎ落されて強調された作りこみの中に、
    観る側が薄っぺらく感じえない想いが
    緻密かつあからさまに織り込まれていて、
    それがこの役者たちだからこそ語れるであろう
    キャラクターそれぞれの独特の質感となって
    観る側を巻き込んでいくのです。

    それぞれの男性の描き方に、
    ぶれない雰囲気の貫きがあって、
    色の濃さが観る側にとって迷わないわかりやすさを醸し出していく。
    さらには女優たちが
    持ち前の個性と繊細に紡ぎだされた密度で編み上げる
    キャラクターが抱く同性への感覚と
    同性の視座から浮かび上がる彼女の姿が
    主人公の女性の実存感となっていく。

    最初はどこか醒めて舞台を観ていたにもかかわらず、
    気が付けばこのフォーマットと精度や密度でなければ表しえない
    感覚にがっつりと取り込まれている。
    主人公の視座から垣間見える
    男女の業のようなものに苦笑しているなかで、
    デフォルメされたものの向こう側からやってくる
    笑いでは流しきれないなにかが
    しっかりと積もっていく。
    観ていてがうなずいてしまうような
    キャラクターの存在感と醸し出される滑稽さが
    刹那の可笑しさで揮発することなく
    ボディブローのように効いてくるのです。
    しかも、それらは、可笑しさにを踏み超えて
    逃げ場のない切なさとして観る側に沁み入る。
    気がつけば、その切なさにこそ
    しっかりと支配され、
    さらには、その切なさを醸し出す
    男女の普遍のようなものにまで
    心を奪われている。

    散々笑っておいて何なのですが
    終わってみれば、岩井作劇の魅力に
    どっぷりと浸りきっておりました。





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    2012/01/22 09:12

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