満足度★★
設定の陳腐さから抜け出せず
閉鎖的コミュニティで進行する頽廃を、外部からそのコミュニティを訪れたものが目にしていく、という構造の物語。
ちらし裏にあった劇評の転載にあるように、RPG的展開で、そういったゲームを連想させる仕掛けの演劇への導入(ト書き朗読の文体など)は面白い。
しかしこの異常コミュニティが「宗教カルト」とした時点で、観客の脳味噌内の想像力を開くのが一気に難しくなってしまうのだ。われわれが想像する現実よりはるかに突出した異常性をもったオウム事件をわれわれは知っているからである。フィクションのレベルでもすでにオウムの呪縛から逃れるのは難しいのだ。
この設定の陳腐さから、「正しい街」も逃れ得なかったというのが私の印象である。予定調和の中の驚きのない物語。個々の人物造形の精密さ、役者の表現力もいまひとつ。