満足度★★★★★
谷賢一らしい舞台
目の見えない主人公・モリー(=南果歩)が、天才眼科医ライス(=相島一之)の手術を受け、光を見る。
難しい手術を決行し、成功させるライス。
モリーの夫・フランク(=小林顕作)も手術の成功に大喜びするが、はたして「見える」事が「良い」事なのか。
見える人間が多い中にいる、見えない人間とは、「不幸」なのだろうか。
多数派の人々が持つ一方的な認識が、「幸福」をもたらそうとする行為が、一つの破滅をもたらしていく。
自らの劇団、DULL-COLORED POPで谷賢一が追い続けてきた物が、一つクリアに結集されたようなこの『モリー・スウィーニー』という本。
相性はバッチリだったように思える。
複数の空間を巧みに作り上げていく演出手法も実に鮮やか。
休憩前は、モリーが光を取り戻すまでを、
休憩後には、光を得てからの生活を描いているが、それぞれのラストにあたる部分で用意された仕掛けもグッとくる。
光の無い中で生活していたモリーが、光を得る事で実に多くの物を失っていく。
全く違う世界に移された人間が幸福から転落していく様が、痛々しく、生々しい。
実に谷賢一らしい舞台だった。
重厚な本に、がっつり向き合っている感があったが、
夫・フランク(=小林顕作)の芝居が遊び心を発揮し過ぎる事で全体のバランスを崩していたようにも見えなくもない。
が、ともあれ良い芝居を観た。