満足度★★★★
戦争と日常
イラク戦争が始まった日を挟んだ5日間における、日本の若者の様子を斬新な語りと身体表現のスタイルを用いた作品で、はっきりとした物語のない、とりとめのない言葉の羅列の中から、現代日本の若者が持つ何とも言えない浮遊感が立ち上がっり、社会批評的な視線も感じられました。
基本的には渋谷のラブホテルに泊まり続けた男女の話で、そこに渋谷から赤坂へ向かう戦争反対のデモのエピソードが交わるのですが、役者と役の関係が固定されていなくて、他の人が言っていたことを伝聞型で話しているかと思いきやいつの間にか一人称での話になったり、対話の相手役に入れ替わっていたりと、変化し続ける様子が印象的で、物語の展開があまり気にならない不思議な魅力がありました。
台詞も途中で話題が脱線し続け、主語と述語が対応していない様なダラダラとした文体で、日常では普通な会話が舞台で行われると強烈な違和感があるのが興味深かったです。
背後に大きな白い壁が立つだけのシンプルな空間で、壁や床にロシア構成主義的な形の照明が当てられるのがスタイリッシュで素敵した。
初演から7年経っている現在に観ても新鮮で刺激的で、普遍的な魅力のある作品だと思います。