満足度★★
優しい空気感
仮病をすることで別世界に繋がるファンタスティックな物語で、詩的で優しい雰囲気が漂う作品でした。
仮病で学校を休んでしまった真面目な女子高生の独白から始まり、刑務所で刑に服している男のエピソード、家族から独立したがっている女の子のエピソードが平行して描かれ、仮病をした人達がバスに集まって神社や恐山を巡るという物語で、舞台の進行について言及するメタな台詞を挟みながら展開する構成でした。3つのエピソードがあまり関連しないままだったのが物足りなかったです。
仮病をしがらみから離れて自由に生きることのメタファーとして扱っていて、1人では生きていけないことを表現していると受け取りました。
物事が悪い方向に進む予感を持つとき、一歩間違うとそうなることを望んでしまうという心理が描かれていて、心に刺さりました。このテーマをもっと拡大して見せて欲しかったです。
大半のシーンでBGMが流れていたり、数名で空を見上げる演技や、転換の為の暗転が何度もある演出は、個人的には古臭く感じられて好みではありませんでした。
主役の高校生を演じた大畑麻衣子さんは「大人が演じる子供」というスタンスが明確に出ている安定した演技で良かったです。
父親を演じた植村せいさんは、笑いの起きない客席の空気感を一気に変えるユーモラスな味があって良かったです。