みちゆき 公演情報 椿組「みちゆき」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    妄想の果て
    物語は北澤の葬式のシーンから。ここでコミカルなダンスも披露し、高羽の独特なセンスが浮き出される。そして死んだはずの北澤(西泰平)が友人のもっさん(長嶺安奈)に「自分は死んでない。焼かれるのは嫌だ。俺を背負って、ここから逃げてくれないか?」と言い張る死体に逃亡を持ちかけられたことから、この「みちゆき」は始まるのだ。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX


    裏日記はこちら→http://ameblo.jp/misa--misaki/

    だから「みちゆき」はまんま、道行なのだ。
    朽ちゆく死体を背負いながら逃げるもっさんに、彼女に密かな恋心を抱いている田辺医師が加わり二人と死体の珍道中が始まる。ここで喪服のもっさんが白装束の死体を背負って彷徨うさまが実に可笑しいし、はたまた、北澤の精気を失った死体があまりにもリアルだ。

    もっさんは口を半開きにしたままの死体を、腐らせないようにと氷で冷やしてみたり、北へ行くことを決意したりと、とにかく死体を恋人のように甲斐甲斐しく世話をするのだ。更に北に向う田辺の車中で、死体と仲むつまじく会話するもっさんをみるとどうやら二人は恋人同士だったようで、もっさんに流されるままついて来た運転手の田辺の心が痛々しい場面でもある。そして彼らを追う遺族と死体の死因に不信感を持つ刑事らが絡み、物語は大山けいこ温泉という旅館に落ち着く。

    しかし、この旅館に終結した自殺志願サイトの面々と生死の根源に触れ、そしてこれを支援する旅館の女将にも疑問を抱いたもっさんは思うのだ。ここは生きたいと考える私たちの居るべきところではない。だってここは死にたいという人たちの場所だもの。

    徐々に朽ちてゆく「死体」を背負いながら朽ち果てるまで道行しようというもっさんの心が痛々しい。やがて田辺の「死体は死んでいるんだ。」との説得と真実によって、目が覚めたもっさんは幻想から目覚めたように現実を見るのだった。

    北澤本人と家族の意思で安楽死を選択した後の物語。死ぬ直前にやっぱり死にたくないと本人の気が変わったら・・・というセリフにかなり考えさせられた。また雪の降る北の国の情景があまりにも美しく、そこで落とされた赤い塊も芸術的であった。喪服に白いナース帽って案外、色っぽいんだね。西泰平と長嶺安奈が絶妙な演技をしていた。素晴らしい。

    コミカルで滑稽で愉快な舞台。だけれど胸にズシン!!と響く。

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    2011/12/10 13:10

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