ソウル市民五部作連続上演 公演情報 青年団「ソウル市民五部作連続上演」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    『ソウル市民1919』 1919年には何が起こったのか?
    この作品は、とても優れたコメディである。
    …と言っていいかな…。

    と同時に、「笑い」の向こう側(家の外)では何起こっているのか、を知っている観客たちに「考える」機会を与えてくれる作品でもある。

    ネタバレBOX

    この作品はとても優れたコメディでもある。
    (私はコメディとして楽しませてもらった)
    きちんと台詞と、その関係で笑わせてくれるコメディ。

    実はもっと淡々としてものを想像していた。
    それは、時代設定、場所の設定(1919年京城)があるからだ。

    それはともかく、とにかく面白い。
    爆笑してしまうシーンもある。
    相撲取りが出てくるという、飛び道具的なところもあるのだが、それだけではなく、随所に面白さを加えてくる。

    とは言え、そんな面白さの「外」では、三・一運動の気配が家庭内に忍び込んで来る。そういう(日本人から見た)不気味さを、女中がいなくなるというさりげないことで表し、さらに相撲取りという、非現実的なキャラクターと彼がいなくなってしまうという不安感で醸し出すうまさがこの戯曲にある。

    この家では、そんな不気味さの上で、賑やかに歌い、「ここはどこなのか」「彼らはここで何をしているのか」ということとは無縁にいる。
    この「呑気さ」、そして「悪い人たちではない」ということがこの作品の肝でもあろう。つまり、これが一般の人たちの姿だ。
    内(家)の中の小さなさざ波が彼らの最大の問題であり、家の幸せがすべてなのが彼ら(我々)なのだ。
    それによって見過ごしてしまうこともある、というのは深読みしすぎなのと、後知恵によるものであろうか。

    もちろんこれは、「お話」だ。しかし、そのお話は説得力があるので、観客に「考えること」を与えてくれる。
    舞台の上の家族の「外」で起こっていることを、観客は知っているからだ。
    笑いながら、そうしたところに持っていくうまさ。

    そして、今回も役者が皆うまい。
    台詞の応酬の巧みさ、重なり合いは、前作『ソウル市民』ほどは感じないが、それでも自然にそういうシーンがある。
    とにかく面白くってグイグイ引き込まれる。
    こんな面白くっていいのだろうか、なんてこと思ったりもしてしまう。

    こちらも1919年の設定なのだが、現代口語に違和感まったくなし。
    戯曲と役者がうまいからだろう。

    アフタートークは奥泉光さんと平田オリザさんだった。
    奥泉光さんって、こんなによくしゃべり、面白い人とは思わなかった。久々に満足度高いアフタートーク。
    平田さんと奥泉さんは大学の先輩後輩で旧知の仲ということで、トーマス・マンと平田さんなど実に面白い話が聞けた。

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    2011/11/22 04:47

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