新宿コントレックス Vol.2 公演情報 新宿コントレックス実行委員「新宿コントレックス Vol.2」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    さらに深化。
    「笑い」をもたらす表現であることを条件に募った個人/団体のよりすぐりの作品を、一度にいくつも観ることができるという一夜限りの祭典で、開催期を3ヶ月以内という「ハイペース」で行うということを掟に開催しているイヴェント、新宿コントレックス。
    このイヴェントを企画したのは今、首都圏界隈のコメディやってるあれこれで最もイケてるアガリスクエンターテイメント。開催場所は彼らのホームグラウンドだというシアターミラクル。ここは普段、お笑い系のライブを多く上演している劇場なのですが、そういった場所にあえて活動拠点を置くのは、お笑い/演劇のジャンルを問わず楽しんでもらいたい、という願いがあるからなのだそうです。
    そういったイヴェントの趣旨や開催目的が当日パンフレットに丁寧な挨拶文で記載されているのでイヴェントとしての信頼性が高く、また出演した団体紹介に関してもどういった類いの作品を作っているのかが明確に書かれているので、後々思い返した時のいい手がかりになりそうです。
    そして、こんなに楽しいイヴェントが考えられないような価格で楽しめるというのもあって、このイヴェントにわたしはちょっとクラクラしてます。笑

    ネタバレBOX

    ■ヨコスカトイポップ ★★★
    『うんちく』3人の男女がそれぞれうんちくを披露。あまりにもくだらない時に頭をスリッパでちょっとたたかれる。だんだんKYなこといったからとかじゃなくて、リズミカルでいいね!とかそんな感じのノリになってくその常識のズレ加減がちょっとおかしい。

    『次元の隙間』漫画家(女)の家を訪ね、結婚したことを報告する編集者(男)。
    その相手とは、漫画家の描くキャラクターだった。編集者と両想いだと信じていた漫画家は振り向いてもらうため、必死のアピールを試みるがあえなく撃沈。2Dと3Dの齟齬による恋愛って割とありがちだけど、実は変態だったって驚きから漫画家先生の熱が急降下していくときの表情がおもしろかった。「どうぞお幸せに!」と吐き捨てたラストは痛快。

    『妖精さん』小腹が空いてお菓子を食べようとしたあるひとりの女子のもとにお菓子の妖精があらわれてちょっかい出すってはなし。どうしたって妖精にみえない妖精がお菓子メーカー1つにつき1人の妖精がいるとか、大御所のお菓子メーカーは呼び捨てで読んじゃダメとか、日本と海外だと装いが違う、とか妖精界の規律/規範を熱く語るすがたが笑えた。

    どの作品も、見た目普通のひとたちからはじまるカミングアウトを起点にしたすこし浮世離れしてる「あっち側」のひとたちとのふれあいからじわじわくる笑いで楽しめました。


    ■コーヒーカップオーケストラ ★★★★
    『殺し兄弟 2011』タイトル通り、殺しを依頼された兄弟と依頼人のヤクザのコント。
    兄弟はウィンブルトン選手権を目指しているらしいのだが、手にしているのはバドミントン。
    WHY??とおもわずにはいられない、しかしそんなことすらどうでもよくなる力技万歳、シュールななりきり系。弟役の後藤さんが弾けてた。

    『芦田愛菜、休日に山へ行く』ドリームズカムトゥルーの「晴れたらいいね」に合わせて愛菜ちゃんの山登りを実況中継。スタッフ役(宮本さん)がその都度「晴れたらいいね」の歌詞を状況確認の掛け声として引用するのがなんともおかしい。ここでも芦田愛菜ちゃん役の後藤さんが弾ける弾ける。

    『OPPAI 祭り』知らぬ間に乳房を落としてしまい、慌てふためく女を「祭りだ!」と言って小馬鹿にする男たち。ブチ切れた女は乳房なんていらない宣言。
    そのスピリッツに感銘を受けた男とゴールインするという、愛のものがたり。
    OPPAIネタでうわーって盛り上がる中学生的なアホ臭さもさることながら”ありのままのわたし”が受け入れられるという救いがあるのがいいなぁ、と。あと、ハマりすぎの宮本さんの女装もナイス。

    『最後の号令』転勤のため、このラーメン店で働くことが今日で最後の店長がバイトのふたりとお店であった悲喜こもごもを振り返りながら終礼(最後の号令)をする。
    ラーメンの汁をお客さんの服にこぼしたこと、床に落ちたチャーシューをそのまま皿に入れようとしたこと、無断欠勤、そして店長とバイトくんの彼女が実は関係を持っていたということ。
    実はそれが引き金となって埼玉の店舗から千葉の店舗に移動になったらしい。店長は男泣き。バイトもつられて嗚咽を漏らす。それにいい塩梅で流れ出すビートルズのレットイットビーのギャグめいた哀愁のダンディズムったらない。超笑わせてもらいました。


    実はコーヒーカップオーケストラを2年前にみた時はおもしろいところはたくさんあるけど、全体としてみると、すごくおしい!!って印象が残ったのですが、わたしが今まで面白さを見落としていたのでしょうか。かなり、おもしろかったです。
    笑いの類いとしてはカブリものだったり、なりきり系だったり、ちょっと見るからにオカシイなひととかが困ってたり怒ってたりする古典的な感じではあるんですが、全力で体当たりしてる様に、徐々に前のめりになってしまい、ズルズルとその世界に引き寄せられていきました。ひとまず12月の公演、チェキります。



    ■アガリスクエンターテイメント ★★★★★
    『AC~アガリスクコント~5』
    エクストリーム•シチュエーションコメディ(ペア)

    冒頭で、ワークショップでひとが来なかったからふたりでやることになったこと、「バッドバースデー」というイギリスの戯曲を上演することが伝えられる。

    舞台はとある一軒家。今日はこの家の主、ヘンリーの誕生日。
    彼はホームパーティーの準備に追われる妻のブレンダが不在なのをいいことに不倫相手のローズを部屋に連れ込みよろしくやっていた。そこへ妻のブレンダのまさかの帰宅。ふたりが鉢合わせしないように『嘘をつき』『誤摩化す』ヘンリー。しかし事態は余計ややこしくなり、更に追い打ちを掛けるかのようにして、ローズの夫、ドンまで居場所を嗅ぎ付けてやってきてしまう。更に、ヘンリー家に水道屋としてやってきた男にも秘密があって...。

    今、この場所で、会わないほうがいいひとたちが、入り乱れることで生まれる齟齬。
    その関係性の相関図を、理詰めでみせられたのが2010年に見たみんなの部屋だった。

    2011年の10月にみたファミリーコンフューザーでは、痴呆のひとからみてそのひとが、今、誰なのかわかるように、ネームプレートをつかって示した。

    今回の公演ではこれらふたつの方法は更に深化/進化を遂げていた。
    まずこの戯曲は、5人登場する。しかし役者はふたりだった。どうしたって3人足りない。
    だったら、手の空いたほうが、それをやっちゃえばいいんじゃないか、というのが今回。

    その方法は、5つの野球帽に登場人物の名前がそれぞれ書かれたものだった。
    その帽子をかぶることでふたりは誰かになる。その役は常に代わる。

    これは、チェルフィッチュが一世を風靡した『主体と客体が入れ替わり、役がローテーションしていく』あれだとおもった。

    でも、アガリスクはもっと進んでいた。
    『役』というもの、その不確定性原理に、『嘘をつき』『誤摩化す』という誰もがそれを知りながら、見ないフリをしてきた超根源的なことを、逆説的に暴露してしまったからだ。

    これは、誰もまだみたことがない、最先端の、行き過ぎたコメディだったといえる。
    この先、アガリスクエンターテイメントはどこに突き進むのか。楽しみだ。

    しかし、冒頭でイギリスの戯曲って言ってたけどあれは本当だったのだろうか。
    ワークショップは誰も来なかったのは嘘でした!て浅越さんが言ってたけれど。

    そういえば、いくら虚構だからとはいえ、明らかに成立しない場面だったり、どうしようもない時に役を放棄しようとしてピ!て笛を鳴らして「はみ出さない!!」て言うやつ、おもしろかったな。
    あぁいうのいい。
    朝越さんて安定した説得力がある感じがする。
    少年のまま大人になったみたいなあどけなさがあるのに、不思議。
    塩原さんの、すっとぼけ方ってなんかすごく洒落てる。なんか、汗臭くないというか、西洋的。
    そんなふたりの息がぴったりで、みていてすごく心地よい。



    ■ハーリ•クィン ★★★★★
    膨張する宇宙によってもうすぐひとが暮らせなくなる惑星から、人々の期待を胸に日本に上陸した宇宙人の男はひとりの女性に恋をする。日本語の英才教育を受けた男はしかし、J-POPでしか話すことができなない。ふたりの声は、想いは、うたとなって響きわたる。しかし、永遠は続くはつづかなかった。マグマが吹き出し、ただちに宇宙を脱出しなければ宇宙人は滅びることとなる事態が訪れたのだ。仲間を助けるために宇宙へ行き、再び日本に帰ってくると60年もの月日が流れていたのだった...。

    J-POPという誰かへの気持ちをうたった言葉ではあるものの、『あなた』へのものではない言葉でしか、伝えあうことができないという、ディスコミュニケーションが、 J-POPを重ねるたびに余計なことを言うよりも『こっちの方が伝わるんじゃないか』と思わせる凄みが増していくようで、はらはらした。

    異星人と地球人の交流を描いた作品は多々あれど、これは今までに見たことのない斬新なドラマだったとおもう。

    去年、今年と2年連続でアガリスクエンターテイメントの『無縁バター』で債権回収者の役で出演されていた望月雅行さんと、ファミリーコンフューザーに出演されていた大久保千晴さんが好演。

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    2011/11/17 07:03

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  • ご来場ありがとうございました。アガリスクエンターテイメント主宰の冨坂です。
    過去作との比較でここまで深く語っていただき、誠に恐縮です。

    あと、イギリス戯曲『バッド・バースデー』作:ゲイ=ルーニーってのも嘘でした、すいません。イギリスの喜劇作家レイ=クーニーっぽい話を僕が捏造し(笑)、それを稽古場で「こういうコメディあるあるw」とか言いながら二人仕様にいじったり、はみ出たりと改造しながら作ってました。

    首都圏界隈のコメディやってるあれこれで一番イケてる…かどうか自信は無いですが、本気でそれ目指して頑張ります(笑)
    今後ともよろしくお願いいたします。

    2011/11/17 21:35

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