ひとよ 公演情報 KAKUTA「ひとよ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    やや作りこみが過ぎるとは言え
    やはり、この劇団の資質は健在でした。

    会場に足を踏み入れた瞬間にワクワクします。

    上演時間は2時間弱なのに、その中にしっかりと、登場人物のそれぞれの15年が丁寧に描かれている。
    これだけの、特化された虚構世界の出来事を描きながら、その裏にきっちりと、人間の真実の姿が投影されているのは、ひとえに、桑原さんの筆力、演出力、そして、KAKUTAの劇団員の演技力のなせる技と、いつも感心します。

    ただ、今回の舞台は、自然な演技に定評のある劇団員と、役を演じるという演技法の一部客演陣との間に、微妙ながら、演技の不協和音を感じました。

    また、若い二人の登場人物が、蛇足に感じてしまいました。友国と木俣のカップルは出さない方が、話が散漫にならなかっただろうし、リアルさが増したように思いました。

    ネタバレBOX

    相変わらず、KAKUTAの桑原さん、若狭さん、高山さん、成清さん、原さんの役を生きる技術に魅了されました。

    普通、劇団員の場合、座付き作者が、似たような役を書く傾向があり、バランスを保つためや新しさを求めて、客演陣を投入する方法が取られるように感じる劇団が多いように思うのですが、KAKUTAの役者さんは、いつも、その芝居の役がまるでその人自身のように感じさせて下さるので、芝居内容だけではなしに、今度はあの役者さんはどんな人間として、舞台に現れるのだろうと、常に興味が尽きず、観劇を心待ちできる稀有な劇団だと感じます。

    今回もその期待は裏切られることがありませんでした。

    ただ、「ひとよ」に関する決め台詞を、客演の岡さんに任せたのは、失敗だったようにも感じました。岡さんは、役を演じるタイプの女優さんで、あの台詞の前に、さあ、ここで大事な台詞を言うぞという一瞬の溜め呼吸を感じてしまったのです。
    だから、最後の最後で、あー、これはお芝居だわという感じがしたままエンディングとなり、いつものKAKUTAの終幕から感じる衝撃が薄まってしまったように思い、そこがちょっと残念ではありました。

    まいどさん演じる堂下の顛末は、もう少し前に出して、終幕は家族だけにした方が効果的ではなかったかな?と感じます。

    いつもセットの巧みさに舌を巻くKAKUTAですが、今回も、舞台上空のタクシー車内の場面が秀逸で唸りました。運転手さん、3人の運転気質までが如実に表出されて、桑原さんて、あれだけ、重要な役を演じつつ、こんな演出をできるなんて、驚異的ですね。

    あ、そうそう、登場人物の台詞に出て来る「タクシードライバー」の映画感。私も当時全く同じ感想を持ちました。あの映画は決して面白いという内容ではありませんでしたが、あの主役の貧相な生活感が今でも胸に残ります。あの生き様は体験したくないなと。

    桑原さんて、私より何世代もお若いのに、すごい感性の持ち主だったんでしょうね。きっと幼少の砌から。当パンの彼女の巻頭文を読んだ時点で涙が出ました。

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    2011/10/25 23:36

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