Kと真夜中のほとりで 公演情報 マームとジプシー「Kと真夜中のほとりで」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    時間の肌触りを伝える力
    冒頭のひとつの感覚から
    次第に広がっていく
    その、真夜中の感覚に浸されて・・・。

    作り手のこれまでの作品にも内包されていた精緻さが
    従前にはなかった強度をもって
    やってきました。

    ネタバレBOX

    冒頭の一つの想い、
    それが線として他の想いに交わる。
    繰り返しのなかで
    少しずつ広がっていく感覚。
    別の想いが置かれて、いくつもの感覚がさらに現れて
    タイムスタンプが押されたその刹那の
    俯瞰へと変わっていく。

    ダンス的な豊かな感覚のニュアンスを持ったシークエンスが
    舞台に生まれて
    リズムが身体によって紡ぎだされ、
    真夜中の、なにかが解き放たれた感覚が
    舞台上に満ちていく。
    その感覚をゲートウェイにして
    キャラクターたちの一夜の時間軸が現れ、
    次第に、3年前に尋ね人となった女性、
    Kの存在が
    原点の位置に置かれて
    彼女との様々な距離が解けていくように
    いくつもの記憶が紡がれていきます。

    女性の5年前のKとの記憶、
    断片的で曖昧な中にもKの感覚が浮かんでくるエピソード。
    尋ね人へと変わる少し前のKとの係わり合いの記憶をいだく女性たち。
    ノックの音、去っていく足音、電話・・・・。
    あるいは夜の街を歩くKの兄
    もしくは、Kの靴が置かれていた湖のほとりで
    写真をとる男性・・・。
    切り取ることができない
    彼女の見ていた湖の風景の深さ。
    さらには、別の家族のエピソード。
    2時間後の始発を待つ女性との駅の風景。
    駅舎に貼られた尋ね人のビラ、その中に兄が作ったKのビラ。
    別の家族とKの重なりの質感が、
    深夜の町の空気の同一性や広がりをかもし出していく。

    まっすぐと尋ね人の彼女に向かうエピソードのベクトルや
    そのベクトルと交差する別のエピソード。
    真夜中の時間が歩みを進める中で
    舞台上を進むいくつかのエピソードは
    それぞれのニュアンスを貫くように交差し
    町全体の時間の流れにKとの様々な距離が組み込まれて
    観る側の体感的な時間をも引きずり込んでいく。

    Kを原点として、
    かかわりあっていくものの広がりは
    もう、明けることのないような
    それでも明けていくであろう
    閉塞感を持った夜の肌触りや温度にたどりつく。
    それでも進む真夜中の時間は
    役者たちのさらなる身体の疲弊を強いて
    一夜を過ごして夜明けを迎えたときの
    解き放たれたような感覚にまでたどり着く。
    それは、Kの記憶を消し去るように
    町を出て行く女性の感覚に重なり、
    Kの記憶に対する町の
    繊細でかすかな
    記憶の滅失のテイストにまでつながって。

    終演、舞台上の役者たちだけではなく、
    観ているだけの自分自身までが
    空間の時間に流され、空気に運ばれて
    明らかに消耗していた。
    でも、そのことで感じ方がぼやけてしまったわけではなく
    何かが麻痺したような感じや、
    囚われた時間の重さや軽さに
    自らがさらに覚醒したような感覚があって。

    振り返れば
    真夜中の世界に編み込まれていった
    キャラクターたちのさまざまな記憶、
    Kの兄の想いや、Kの兄を思う女性の気持ち、
    Kにかかわった先輩や友人たち、
    さらにはKと直接交わることのなかった家族の想いまでが
    時間の流れに編みこまれていったにもかかわらず
    個々のエピソードが質感を失うことなく
    観る側にクリアに置かれている。
    記憶と今の重なりや広がりが
    それぞれの時間や空間の軸とともに
    観る側に感覚のリアリティを育んでいて・・・。

    劇団の他の作品がそうであったように
    この作品も是非にもう一度見たいと思いました。
    それは、なんだろ、よしんば辿りきっても
    再び心に呼び戻したいと思う
    人間のある種の本能にも思えて。

    再びあの空間や時間を過ごす時
    何が見え、感じることができるのか・・・。

    週末に、がんばって再見したいと思います

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    2011/10/20 17:56

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