センの風とムラサキの陽【8/8池袋演劇祭CM大会・最優秀賞受賞!】 公演情報 劇団バッコスの祭「センの風とムラサキの陽【8/8池袋演劇祭CM大会・最優秀賞受賞!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    余力を残して・・・
    池袋演劇祭優秀賞受賞の凱旋公演の形をとった再演もの。正確には三演ということらしいが。

    古色蒼然とした旧公会堂のような南大塚ホールだが、戦時中が題材のこの作品にはふさわしい雰囲気かもしれない。

    作者は大変気に入っている作品らしく、自ら代表作になるだろうと書いている。

    秀作であるのは確かだが、今後、上演を重ねていくほど、さらによくなっていく可能性を秘めた作品だと思う。

    逆に言えば、まだ不満に感じる点もあるということ。

    役者の演技には文句がないが、脚本の人物描写はまだ練る余地があると思う。

    昨年、個人的には☆4つの評価だったが、今回も再演でやはり昨年と同じ点が気になった。

    今回、一番感心した点は、俳優が箱の大きさに合った芝居をしていたという点。

    小劇場劇団の場合、それがひとつネックになるのだが、見事にクリアしていた。

    いつもは多少オーバーに感じる主役・丹羽隆博の演技が、大劇場ではちょうどよく見えた。

    ネタバレBOX

    昨年、冒頭の球技(?)がとてもよかったので今回どうかと思っていたら、球技とアクロバティックな動きを組み合わせ、より大劇場に合ったオープニングになっていた。

    作家の森山智仁の昨年の解説によると「史実の再現ドラマではなく、あくまでフィクションなので」ということだった。

    まぁ、そうなのだが、今回も気になったのは、重要な任務を担う役柄、研究者と新聞記者4人とも女性と言う点。この時代、男性が戦地に行っているとはいえ、やはり不自然に感じてしまうのだ。

    今回は出演者も増えたが、全体としてやはり女優の数が多い。
    しかも、研究者と新聞記者は1人ずつ役が増え2人ずつ出るが、またも女性なのである。

    小野教授の田仲晶は昨年に続く好演で、食堂の娘だった雨宮真梨が今回はもう一人の研究者役に変わった。
    既婚を装い、実は未婚という昨年の設定はなくなり、筋がすっきりした。

    新聞記者・神出を昨年好演した金子優子が今回は神出と炎童子の2役を演じた。
    そのぶん神出のウェイトは多少軽くなった。

    炎童子は原子力の炎ともいえるのかもしれない。
    もう少し演出面で強い印象を持たせたほうがよかったと思う。
    ラスト、出撃の場面で、晴生(丹羽)との対決が観たかったのだが。

    大門少佐は、昨年の石井雄一郎から西郷豊に変わったが、貫禄があり、適役だった。

    陸軍中尉の杉本仕主也も、所作が軍人らしくてよかった。

    研究室の学生が2人とも急に海軍を志望して簡単に入ってしまうのもひっかっかる。
    晴生が入隊前夜「明日、飛ぶということもある」と話すが、入隊して訓練もなしにそれはありえない。

    学生の会話に「何ビビってんだよ」や「やべぇ」と現代語が入るのも、いつもの現代語の時代劇では気にならないが、戦時中では気になる。一考されたし。


    村崎座の座員も戦意高揚劇団にいるとはいえ、この時代なら軍需動員は当然あったはずで、せめて会話に出すくらいあってもよかったと思う。
    そうでないと、まるでサークル活動みたいに好きなことをやって過ごしているふうに見えてしまう。

    座付き作者が軍事機密まで知っているという設定も前回同様気になった。

    村崎座の蒙古襲来の芝居も、陰陽師と炎童子が出てくるので複雑になった印象。

    座付き作者の稲垣佳奈美の柝の打ち方がよい。案外、ちゃんと打てない俳優も多いのだ。

    舞台美術は、予算との兼ね合いもあるだろうが、前半の部分などもうひと工夫ほしかった。

    ラストの灯篭流しの部分はなかなか美しい演出だが、小野教授が花をみつけるところの晴生との場面、花にスポットライトが当たる時間が長いわりに、中途半端に幕が下りてしまう感じでもう少し丁寧な終幕にしてほしかった。

    昨年は小野がこのあと長崎に行き今生の別れになるという設定なのだが、今回、花が咲いてると、原爆投下直後なのかどうか?、時系列が混乱する。

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    2011/09/13 15:52

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