満足度★★★★
坂田守の舞踊が秀逸だった現代オペラ
室内オペラの現代音楽作品という珍しい公演
しかも、4幕作品を4人の作曲家が分担対応するというのも、
あまり聞かない。
(文化大革命の頃の中国では、一時この手法が華やかだったそうだが、
文革が終わるとあっさり捨てられてしまった。)
乱歩の推理小説が素材なので、ネタバレは避けて、
興味のある方は原作かネット等で当たって頂ければと思う。
それで、聴いてみた結果は、やはり、不協和音や特殊奏法が中心の現代音楽とはいえ、
4人の作曲家の個性の違いが出てしまって、良い結果をもたらしたとは思えなかった。
過去の流行歌や民謡を取り入れた人、楽器音のみならず電子音を取り入れた人など様々で、
それを取り入れるかどうかはどちらでも、としても、
ある幕だけある手法が取り入れられ、それがその幕の表現に必然的というよりは、
担当作曲家の好む手法として、というだけでは、どうなのかなあ、と思った。
4人の合作(?)と言えば、「不都合な4日間」を思い出すが、
こちらは、台本作家が、バトンタッチしていき、
後に宿題を押し付けていくことが笑いの要素になっていたわけだが、
音楽の場合、そういう笑いが取れるわけでもなく、
やはり1人で作曲された方が良かったのではないか?
個人的には第1幕の音楽が、これから始まる不気味な世界を巧みに表現しているように感じられ、
好みに思ったが、しかしこれは全く嗜好の問題で、音楽自体の優劣の問題ではない。
演奏は、4人の器楽奏者(笙を含む)と、配役の無い歌唱人4人で、
こちらはいずれも腕達者揃いで、良い演奏をしていたと思う。
まあ現代音楽なので、それなりに腕のある人を集めないと、演奏自体無理であろうが。
ステージ上の前面に指揮者と演奏者が座り、
その奥の一段高くなったところに、歌手が歌うため譜面台が置かれ、
そこで歌手は基本的に歌う。
これは昔からオペラについて言われ続けていることではあるが、
「歌詞が聴き取れない」点は、特に改善の努力が払われているとは思えなかった。
しかし、推理小説を題材としている以上、
歌詞がよく分からないというのは、やはり問題とされるべきではないか?
で、もし、以上のみ、つまり、音楽だけの表現だったら、
多分評価はそれほどでもないと思うが、
今回の公演を素晴らしい表現にさせたのは、
なにより坂田の舞踊であったと思った。
顔は白塗りで、ある時は歌手から離れて、またある時は歌手に絡みついて、
いわゆる(暗黒)舞踏的な動きを繰り広げるのだが、
これによって、この話の奇怪な雰囲気が大いに増幅され、
結果的にこの公演を見応えのあるものにしていたと思う。
ところで、サイトでは、彼の名前が無いのだが、
プログラムによると、当初3/24に公演予定だったところ、
大震災の影響でこの日に延期となり、
その際に歌手を歌に集中させるため、
急遽坂田に出演を依頼したとのこと。
それで、更新の際に彼の名前を入れ忘れたよう・・・。
しかし、これがより良い舞台にさせてしまったのだから、
まあ、不思議な経緯である。