満足度★★★★★
“港”は回帰の舞台
先日 ボランティア活動から戻った友人とこの劇の思い出話が弾み、忘れがたいシーンとそこで浮かんだ受け止め方が一致した。友人の分と合わせて遅まきながら感想を述べたい。
そのシーンは暗い舞台にいくつかの灯明が揺らめく場面であり、この瞬間、ストーリーも空間も時間も超えた鎮魂の祈りで舞台も客席も溶け合ったように感じた。
この時期に創られたさまざまなジャンルの作品で震災や一連の事故の影響を免れたものは稀有であり、この場面で過去の戦争や災害に加えて、3月の震災で失われた魂達の回帰する舞台としての“港”も表されたのではないかというのが私達の憶測である。やりばのない鬱屈した想いをここで癒してもらえた。
白いマリアの口ずさむ「聞かせてよ愛の言葉を」も心に沁みた。
黒い衣装で実存主義者のアイドルとなったジュリエット・グレコの持ち歌でもあり、昭和40年代の追憶も楽しませてもらった。
人生の年輪に応じた味わいを発見させてくれる吉田小夏氏の
さらなる活躍を期待している。