満足度★★★★
22年が感無量の乳房榎
第3部、とても組み合わせのいい演目でした。
舞踊劇「宿の月」は、今の時代にも通用する夫婦の情愛と倦怠期のすれ違い等を、喜劇仕立にした作品。舞踊をきちんと表情でも踊れるお二人なので、退屈にならず、微笑ましい気持ちになって鑑賞することができました。
舞踊では、扇子を様々な物に見立てますが、橋之助さんが扇子で赤子を表現すると、実際、赤ん坊がそこに抱かれているように目に映りました。
扇雀さんは、こういう喜劇タッチの舞踊がお得意なので、久々、楽しい舞踊を堪能させて頂きました。
「怪談乳房榎」の方は、内容については、ネタバレで触れますが、獅堂さんの表層的で紋切り型の芝居作法が、水を差し、せっかくの勘太郎さんの熱演を援護射撃しそこねて、単なる早替りに主眼を置くエンタメ芝居に格下げしてしまったのが残念でした。浪江は橋之助さんに演じて頂きたかったと切に思いました。
22年前、この八月歌舞伎が始まった時、勘三郎さんの「乳房榎」を、歌舞伎をほとんどご覧になったことのないPTAの100人の方にご覧に入れて、熱烈な歌舞伎ファンにしてしまったことがありました。
あれから、22年。勘太郎さんが、この演目を上演する日が来ようとは!
様々な感情が湧き上がり、感無量の観劇となりました。