八月花形歌舞伎 公演情報 松竹「八月花形歌舞伎」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    22年が感無量の乳房榎
    第3部、とても組み合わせのいい演目でした。

    舞踊劇「宿の月」は、今の時代にも通用する夫婦の情愛と倦怠期のすれ違い等を、喜劇仕立にした作品。舞踊をきちんと表情でも踊れるお二人なので、退屈にならず、微笑ましい気持ちになって鑑賞することができました。

    舞踊では、扇子を様々な物に見立てますが、橋之助さんが扇子で赤子を表現すると、実際、赤ん坊がそこに抱かれているように目に映りました。

    扇雀さんは、こういう喜劇タッチの舞踊がお得意なので、久々、楽しい舞踊を堪能させて頂きました。

    「怪談乳房榎」の方は、内容については、ネタバレで触れますが、獅堂さんの表層的で紋切り型の芝居作法が、水を差し、せっかくの勘太郎さんの熱演を援護射撃しそこねて、単なる早替りに主眼を置くエンタメ芝居に格下げしてしまったのが残念でした。浪江は橋之助さんに演じて頂きたかったと切に思いました。

    22年前、この八月歌舞伎が始まった時、勘三郎さんの「乳房榎」を、歌舞伎をほとんどご覧になったことのないPTAの100人の方にご覧に入れて、熱烈な歌舞伎ファンにしてしまったことがありました。

    あれから、22年。勘太郎さんが、この演目を上演する日が来ようとは!
    様々な感情が湧き上がり、感無量の観劇となりました。

    ネタバレBOX

    勘太郎さんの4役早替り、若いだけに、行動が機敏で、早替りの観点だけで言えば、もしかしたら、歴代随一だったかもしれません。
    何しろ、10代の時から、この演目の上演は全て拝見していますので。

    ただ、どうしても、気持ちが逸るのか、特に、重信の時に、腰から下が、役になり切れていないように感じました。三次と円朝はなかなかでした。正助は、実直な感じを懸命に演じているけれど、まだそれを演じる勘太郎さん自身が見え隠れしてしまいます。
    勘太郎さんが演じるには、5年早かったような気がどうしてもしてしまいました。
    階段での、三次と正助の早替り、父上の勘三郎さんはそれはそれはお見事で、一瞬にして、役の人柄まで豹変させて感嘆しましたので。
    何度も演じられて、あそこまで達せられる日が近いことを楽しみにしたいと思いました。

    七之助さんは、若いのに、人妻の風格を見事に演じていて、声の出し方も工夫され、巧い女形さんになられたなあと感激しました。

    最後の真与太郎の仇討ち場面を割愛し、代わりに、園朝が口演して大詰を語る趣向。この方が冗長にならず、気がきいていたように感じました。

    お父様は、早替りの時、今替わったとわかる時がありましたが、勘太郎さんは、その点ではパーフェクト!誰もが、驚嘆していて、小気味のいい早替り芝居となりました。

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    2011/08/25 23:19

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