そして誰もいなくなった 公演情報 劇団東京乾電池「そして誰もいなくなった」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    タイトルとサブタイトルにあるようなストーリー展開
    下手の観客席の壁にも、この芝居の内容がいろいろ書いてあったりしたし、推理劇でもストーリーを追うというのでもないのだろう。

    東京乾電池は不条理劇の印象が強い。
    そして、今回も別役実作の不条理劇。

    劇団の初期の頃に上演した作品だということらしい。
    そして、今回は東京乾電池35周年記念公演ということである。

    ネタバレBOX

    大きな黒い箱を男女が前後を持ちながら出てくる。
    箱を持つこと、置くことに関してやり取りが始まる。
    「箱を置けば楽になる」「誰が楽になるのか」「私が楽になる」「そうすると私はどうなる」「あなたも楽になる」「箱を置くときに指が挟まる」などという会話が延々続く。微妙に噛み合ったり、噛み合わなかったりと、まさに(画づら)も含めて「不条理劇」だ。

    その後次々に一癖も二癖もある登場人物たちが現れ、どうやら、誰かが彼らをパーティに呼んだことがわかる。呼んだのはゴードンなのかゴドーになのかオウエンなのかゴウエンなのか、パーティの理由さえも定かでない。
    とにかく、主催者を待つことにするのだが、会話は、やっぱり噛み合ったり、噛み合わなかったり。

    待つ間、お茶を飲みながら、箱からレコードを取り出してかけることにする。レコードからは、主催者らしき男の声がする。レコードの声は、ここに集まった10人は、それぞれの罪により死刑に処すと告げる。彼らには思い当たるフシがなかったり、あったり。
    さっそく1人の男が飲んでいたお茶により毒殺される。
    そして残った9人は慌て、犯人捜しをし出そうとする。
    しかし、また1人、そして1人と殺されていく。

    箱から見つかった手紙に書いてある、10人のインディアンの詩が、どうやら自分たちの運命と関係することに気がつく。
    そして…。

    全編、変な空気がずっと漂っている。
    目の上に濃いアイラインを入れたメイクを全員がしてたりして。
    そんな変な雰囲気。
    絶えず会話は噛み合ったり、噛み合わなかったり。

    確かに面白い。見せる。
    柄本明さんのトチったり、台詞が飛んでしまったり、思わず吹きだしてしまったように見せる演技も冴えている。これはほかの人にはできないレベルだ。
    江口のりこさんも、淡々としながら、長台詞を見事に聞かせ、思わず、「うまいなあ」と思う。

    「ギャグ」とかくすぐりのような台詞が、それほどあるわけではないのだが、「間」とちょっとした関係性だけで笑いに変えていく手腕はさすがだ。

    ただし、物語が妙に古めかしく感じてしまった。
    別役さんの戯曲は、大昔は「へえ」とか「ほう」とか思って観ていたのだが、この最近はどうも古くさい感じが否めないのだ。古典にはならない古さとでも言うか。
    それは、不条理劇っぽい設定すぎて(最初の箱を抱えた2人の会話とか)、それがあまりにも不条理劇そのものなのと、ストーリーの展開が妙に辻褄が合いすぎることにあろのではないかと思う。
    あまり観客を突き放さないのだ。

    例えば、この舞台のラストの「オチ」(あえて「オチ」と言ってしまうような感じ)も、「なるほどねぇー」と思ってしまうものだったし。
    もちろん、ビジュアル的には人を喰っているような感じで、大いに愉快で楽しいものではあったのだが。

    駅前劇場はとんでもないぐらいに満員だったが、35周年記念公演で、公演期間が短いのでもう少し大きな劇場でもよかったのではないかと思った。

    それにしても、東京乾電池は面白いよ、と思う。
    できたら新作を観たかったなあ、とも。
    しかし、次回は、『ハムレット』とのこと。これはこれで期待したい。数年前に観た乾電池の『真夏の夜の夢』はとんでもない怪作で、もの凄く楽しんだので。


    ついでに書くと、今回の舞台の中で、「ゴドー」という名前が出てきた(サブタイトルにもある)。もちろん「待っている」ということから、あのゴドーのことであろうと思う。不条理劇に限らず、「待って」いたりするとよく出てくる。そして、その戯曲そのものをベースにした戯曲も多く書かれていると思う。もちろん、リスペクトだったり思い入れだったりがあるのだろうが、その名前を舞台で呼ぶ限り、本家ゴドーを超えることはできないと思うのだ。まあ、わかっててやってるとは思うけど。

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    2011/08/22 07:27

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