満足度★★
労働と儀式
1983年にニューヨークで初演した作品の改訂再演とのことで、農作業や土着的な儀式のような表現を通じて、コミュニケーションの始まりや断絶を思わせる内容でした。
1人の男が積み重ねられた布を藁を束ねた箒のようなもので払って筒状に巻いて紐で縛る作業を繰り返し、ダンサー達がそれを背負って動き回り、お互い布や木の枝を交換するようになり、共同性の発生を描いているようでした。
1人だけ舞台の周囲に竹で囲いを作る作業を続け他の人達と距離を取っている者も後半では他の人達と同じように巻いた布を背負って全員で苗を植えるかのように舞台上に並べていくのですが、並び終えた途端に争いが起き、全て蹴散らかされてグチャグチャになってしまうのが人間の集団の不安定性を写し出していて印象的でした。
ダイナミックな動きはあまりなく、労働における動作を儀式化したような重心の低いゆったりとした動きがメインで、キビキビと躍動する身体を観る快楽性を感じられませんでした。
作品の内容的に、きっちりしたフォルムやムーブメントではなく、ダンサーそれぞれの個性を見せる意図は分かりますが、一糸乱れぬ緊張感のあるダンスのシーンを入れた方が構成にメリハリが出ると思いました。